世界で最もオシャレな街といえばなんたって、パリ!「芸術の都」「華の都」などパリを形容する言葉は様々だけど、「美」が溢れるこの街に憧れ、やって来る旅人は今も昔も引きをきらない。日本のガイドブックや女性誌を開けば、そこには素敵なパリジャン、パリジェンヌの姿とまるで映画のような風景が手招きしている。となれば、日本人が海を渡ってやってくるのも納得できるというもの。
でもちょっと待った。来てみたはいいが、思い描いていたパリと実際のギャップにショックを受け、「旅行者症候群」という精神科医の治療を必要とする症状にかかった日本人観光客の事例がいくつも報告されているのだ。
在仏日本大使館の関係者が処理した具体的なケースには例えば、宿泊先の部屋が盗聴されており、電子レンジが発する電磁波によって自分は攻撃を受けていると訴えたり、自分がルイ14世であると思いこみ、同行の日本人観光客に命令していた観光客がいるという。
ノートルダム寺院近くのオテル・ドュー病院に勤務する精神科医の話では、これらの症状は、想像と余りにもかけ離れた現実に遭遇した時に起こる症状の一つで、フランスに滞在し始めてから3カ月ぐらいで発症するパターンが多いらしい。また患者の3分の1はすぐに回復するが、3分の1の人は一旦回復するものの再発し、残りは精神病になると答えている。
異文化によるショックを和らげるため、高級ホテルの中には、日本人観光客用に浴衣や日本茶などを用意し、日本のホテルのようなサービスを提供しているところもあるという。
確かに、客が王様のように振る舞える日本 と、売ってやるといわんばかりのパリの売り子の態度にギャップを感じるのはもっともだが、 文化も言葉も違う異国の地で「日本」を探すのも無茶な話である。
「郷には入れば郷に従え」とまでは言わないまでも、せっかく訪れた異国の地、日本では味わえない経験も楽しみの一つと考えられるゆとりが生まれれば、旅行もきっと楽しくな ることだろう。
「Le Journal du dimanche」紙 Quand Paris fait déjanter les Japonais
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