もしあなたが映画監督でベルリンに関する映画を作るとしたら、何をテーマにするだろう。「壁」?ブランデンブルク門?それとも名物カレー・ソーセージ??
同市内中心部の喧騒から離れた緑あふれる郊外の一角でとあるドキュメンタリー映画が生まれようとしている。指揮をとるのは、パリ在住、トルコ出身の若手映画監督ジャグラ・ゼンジルジさん(30)。「Sバーンに乗って友達の家に向かっていた時、窓から外を眺めていて初めて『アレ』を見たの。『木の小屋がいくつも集まっていて、何てドイツ的なんだろう』ってトキめいちゃったわ」と話す。『アレ』とは何と、シュレーバーガーテン。そう、彼女はドイツでは超お馴染み、借地での家庭菜園を舞台に映画を撮っているのだ。
ゼンジルジさんが初めてドイツを訪れたのは今年の2月。国際映画祭「ベルリナーレ」の一環で行われたワークショップに参加した時のことだった。ワークショップの最後に、参加者らは「ベルリン」をテーマに短編映画のアイデアを出し合うが、そこでゼンジルジさんが選んだのが家庭菜園をテーマにした映画「Shanty Garden Town(庭小屋の都)」。結果、このアイデアは若手監督に贈られる 「Berlin Today Award」の3候補作品の一つにノミネートされ、本格的な撮影チームの下での制作が決まったのだ。
いざ撮影がスタート。若いトルコ人女性からの突然の撮影の申し出に、菜園のご年配の主たちは初めこそ少し戸惑っていたものの、「ベルリンという大都市の多様な日常風景とそこに住
む人々の心を描きたい」というゼンジルジさんの熱意に理解を示し、心よく「役者」として参加している。ビールを片手に隣人とおしゃべりしたり菜園の手入れをしたりと、普段通りのことをするだけだが、中には芝刈り機を握る手に思わず力が入っているおじさんの微笑ましい姿も。菜園にはお約束の小人の置物も、もちろん「小道具」として登場だ。
「Shanty Garden Town」は来年2月のワークショップで初披露、そこで同賞の発表も行われる。さて、どんな仕上がりになっているのか、それは見てのお楽しみ。
「Stern」誌 “Jenseits der Gartenzwergklischees”
< 前 | 次 > |
---|