The Krays
ザ・クレイズ 冷血の絆 (1990 / 英)
60年代のロンドン、イーストエンドで人々に恐れられた双子のギャング、クレイ兄弟の半生を綴ったドラマ。
監督 | Peter Medak |
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出演 | Gary Kemp, Martin Kemp, Billie Whitelawほか |
ロケ地 | Royal Oak (73 Columbia Road) |
アクセス | 地下鉄Old Street駅から徒歩 |
- 今週は「英国に唯一存在した本物のギャング」と語り継がれる、伝説の双子クレイ兄弟の半生を描いた映画です。
- 英国にもかつてガチなギャングがいたんだな。暴動に便乗して盗みや暴行を働き、略奪品の写真を得意気にツイッターにアップして即逮捕されるようなバカなガキどもしかいないのかと思ってたが。
- 英国は地域コミュニティーの結束力が高いなどの理由で犯罪組織が成り立ちにくいそうですね。そんな中、出現したのがロン & レジー・クレイです。この双子の兄弟は、今でこそ若者が集まる流行最先端エリアですが、当時は貧民街だったイースト・ロンドンはホクストンで1933年に生まれました。数年後、一家はベスナル・グリーンのVallance Road 178番地に引っ越します。この界隈も、ロンドンで最も貧しく、犯罪率の高いエリアでしたが、本作の撮影時には既に開発が行われ、街の様子が大分変わっていたため、グリニッジのCaradocStreet 32番地がロケ地に使われました。
- 貧しいながらも母ヴァイオレットは、子供たちにきちんとした身なりをさせていたそうです。また彼女は、懸命に戦い、その戦いに勝つよう彼らに教え込んでいたんだとか。本作では母ヴァイオレットを始め、叔母、祖母ら、彼らを育てた身内の女性たちの世界にも目を向けていますよね。
- 「 極道の妻たち」ならず「極道の育ての親たち」みたいな。
- 加えて、彼らの母方の祖父は元ベアナックル・ボクサー、そして父チャーリーもボクシングをやっていたため、双子も幼い頃からボクシングに慣れ親しみ、数々の大会に出場したりしていたんですね。
- 父チャーリーは警察が家に来るたびに必死に隠れて、徴兵から逃れていたね。
- 数年後、双子が成長して、今度は彼らが徴兵されますが、軍曹に暴行を働くなど悪行を重ねたため、兵役中はほとんど営倉で過ごしていたんだとか。そこで知り合った悪人に導かれて、兵役後、彼らは暗黒街に足を踏み入れていくんですね。
- ベスナル・グリーンのスヌーカー・クラブの用心棒からスタートし、やがてそこを買い取って、フランク・シナトラやジュディ・ガーランドなんかも出演するような高級クラブにしちゃうんだな。そこからどんどんのし上がっていって、政界や芸能界などのセレブたちとも交際するようになる。
- しかしそうなってくると敵も増えてくるわけで……。レジーが幼なじみのフランシスとの結婚前に、敵対するマルタ島系ギャングたちのいるパブに乗り込んで銃撃するシーンは、Columbia Road 73番地に今もある「Royal Oak」ですね。
- 火花を散らしていたギャングのジョージ・コーネルを、ロンがパブで撃ち殺すシーンもありますが、こちらはホクストンの「Bacchus Pub & Kitchen」で撮影されました。実際の舞台はホワイトチャペルの「The Blind Beggar 」だったようですが。
- その後、2人は組織の金をかすめ取っていたジャックも殺害、ついに逮捕され、懲役30年を求刑されることになる。ところで本作でクレイ兄弟を演じているのは……。
- そうなんです、80年代に活躍したポップ・グループ、スパンダー・バレエのゲイリー& マーティン・ケンプ兄弟です。双子ではありませんが兄弟ですから、息の合ったところを見せてますよね。
よくあるギャング映画とはひと味違ったつくりで、マイケル・ケイメンの音楽も素晴らしい。クレイ兄弟がギャングとして突出していた最大の理由は、何と言っても彼らが双子だったということに尽きるだろう。ロンは統合失調性を患っていたほか、あの時代に同性愛者であることを公言していた数少ない一人でもあった。レジーの妻、フランシスが錯乱していくのも、この双子の間には決して入れないという疎外感からくる部分もあったんじゃないだろうか。
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