(ロンドン 5月20日 時事)英政府は19日、欧州連合(EU)との間で、貿易に関する国境手続きの簡素化などで合意したと明らかにした。EU離脱でEU市場への自由なアクセスを失っていたが、今回の合意は貿易拡大につながるとみられ、英経済にとって追い風となりそうだ。
EUとの関係改善に向け、英経済の低迷につながった貿易面での見直しが政府の重要課題だった。英政府は、強く求めていた農産物の輸出手続きの簡素化を獲得。一方、英水域でのEU側の漁業権を2038年まで認めることでEUに譲歩した。英政府は今回の合意により、食品価格の引き下げなど家計の負担軽減になるとし、経済成長や企業支援にもつながると期待する。
スターマー首相は首脳会談後の記者会見で、今回の合意について「新時代を画すものでウィンウィンだ」と評価。EUの単一市場や関税同盟、移動の自由への復帰を改めて否定した。
英政府によると、英国とEUは、新たな衛生植物検疫に関する協定を締結。英国がEUの食品安全基準と動物福祉基準に準拠することで、農産物に対する国境検査の一部廃止や事務手続きの大幅な削減を決めた。ただ、フォンデアライエン欧州委員長は同協定に関し、「衛生植物検疫(SPS)分野の共通の枠組みの構築を目指すことで合意した」と述べるにとどめた。
このほか、気候変動対策では温室効果ガスの排出量取引制度の連携で一致。英国産鉄鋼の輸出に対する優遇税制措置も盛り込んだ。また、若者の移動に関する交流プログラムの設定に向け、検討を進めることで合意した。
Tue, 20 May 2025