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Tue, 22 October 2019

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

巨大IT企業に対するデジタル・サービス税、2020年から導入へ - 他国と異なる歩みの行方は

英国では毎年秋になると、財務相が公邸の前に立って赤い鞄を持ち上げてみせる「儀式」を行う日があることをご存知でしょうか。そのために報道陣がたくさん集まり、カメラのフラッシュが次々とたかれます。この日は予算案の発表日に当たり、鞄の中には財務相が下院で行う演説の草稿が入っているのです。今年の予算案発表は10月29日でした。フィリップ・ハモンド財務相が伝統を踏襲し公邸前でポーズを取った後、鞄と共に下院に向かう車に乗り込む様子を、テレビが映し出しました。

例年、予算案には何らかの「目玉」あるいは特徴が見られます。今回はハモンド財務相が演説の中で述べた「緊縮財政の終わりのときは近づいている」という表現がこれに当たりそうです。英国では10年前の金融危機以降、緊縮財政を行ってきましたので、方向転換を示したことになります。もう一つ挙げるとすれば、「デジタル・サービス税(Digital Services Tax)」の導入です。国民から意見を募る手続き(パブリック・コメント)を経て、2020年4月からの導入を予定しています。対象となるのは、グローバル市場で5億ポンド(約744億円)以上の売り上げを計上するデジタル・ビジネスのプラットフォーマー(ソーシャル・メディア、検索エンジン、オンライン市場など)で、財務相は名指しをしませんでしたが、事実上、米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなど、いわゆる「GAFA」を想定したと言っても良いようです。以前からこうした企業は、巨大な収入の割に納める税金が少ないと批判されてきました。ですので、政府は該当企業の英国での売り上げの2%を、デジタル・サービス税として徴収する(創業まもないIT企業は適用外)予定です。

では、新税の導入によって英国の国庫に入る税金収入はどれぐらいでしょう? 「フィナンシャル・タイムズ」紙(10月30日付)によると、「少なくとも30社が対象となり、2023年までには年間4億ポンド」という予測があるそうで、これは1社平均1300万ポンドに相当します。

「ガーディアン」紙(10月29日付)の調べによると、昨年、フェイスブックの英国での売り上げは13億ポンドでしたが、支払った税金は1580万ポンドです。アマゾンは同様に英国内での売り上げが7億ポンドでしたが、納税額は450万ポンド。グーグルは売り上げが76億ポンド、納税額は4900万ポンドでした。どれも売り上げと納税額にかなりの差があります。その理由の一つは、税金が売り上げにではなく利益にかかるためで、米IT大手を批判する人の中には「税金を少なく払おうと故意に利益を少なく計上している」と主張する人もいるほどです。

ここ数年、国際的にビジネスを展開する巨大なIT企業に対し、どのように課税をするかが課題となっています。ただ、現在の国際的な法人税の規則では、国内に支店や工場などの恒久的施設を持たない企業には、原則的に、法人税を課すことができないのです。そこで、こうしたIT企業への課税案や新たな規則作りが、欧州連合(EU)や経済協力開発機構(OECD)、日本を中心とした20カ国・地域(G20)の枠組みで浮上しています。EU内では欧州委員会が中心となって、利用者のデジタル・データを使ってビジネスを行う企業の売り上げの3%を税金として徴収する提案を議論してきたのですが、アイルランド、スウェーデン、デンマークが反対の意見を表明し、暗礁に乗り上げてしまいました。

英国は来年3月にEUを離脱しますが、EUが域内で一斉に3%の課税をするという案を取りまとめようとしているときに、英国が独自のデジタル・サービス税の導入をぶち上げたことになります。先月、スペインでも来年から3%のデジタル・サービス税を導入予定だと発表しており、域内ではバラバラの動きが続いています。新税の実行までには紆余曲折がありそうですね。

キーワード

GAFA(米IT大手4社の略称)

世界的にビジネスを展開する米国のテクノロジー大手グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの英語の頭文字を取った呼び方。検索エンジン、交流サイト、通販などの事業を利用する人のデータを収集・蓄積して新たなサービスを生み出す。それぞれの市場で寡占化が生じており、競争の阻害を招くという批判があると同時に、個人情報の流出(フェイスブック)も問題視されている。
 
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