ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 19 April 2024

異文化相互理解を深めるための ビジネス文化塾

日本人と英国人が、一つの職場で働く際の問題点とその解決方法を指南する

グレアム・ロレンス グレアム・ロレンス Graeme Lawrence 30年間の日系企業勤務、異文化コンサルタントを経て、現在社内通訳者・翻訳者。静岡県立大学国際関係学部卒。2019年のSOASビジネス日本語スピーチ・コンテスト優勝。
www.graemelawrence.com

第7回 社内で文化交流の機会を作っていますか

日系企業の海外子会社を設立・運営することが簡単ではないことは誰も否定しないでしょう。法的、規制的、およびロジスティックス面の難関に加え、言語や異文化というソフト面の課題もあります。ソフト面では、日本と現地の両文化に精通する人材が重要な役割を果たします。今回は日系企業と現地をつなぐ架け橋役に望ましい人物像と、その人が日系企業に貢献できることについて考えてみたいと思います。

異文化間コミュニケーション理論でよく取り上げられる言葉に「アイスバーグ・モデル」があります。簡単に説明すると、見えている文化は氷山の一角に過ぎないため、正しく理解するには水中の見えない部分まで考察しなければならない、ということです。つまり、氷山で水面上に見えているのは振る舞いや行動といった文化の表面で、水中に隠れている部分は目に見えない、奥深い価値観や物事の見方を表します。 それを欧州の日系企業に当てはめれば、水面上の部分は現地スタッフが毎日目にしている日本人同僚の行動です。しかし日本語が分からない、あるいは日本で生活したことがなければ、一般の現地社員は水中の部分と無縁であり、そのため日本人同僚の行動は理解し難いところがあります。

そこで、EQ(心の知能指数)が高く、氷山の水中の部分をよく把握しているスタッフを確保することをお勧めします。協調性があり、日英両方の考え方と価値観を熟知し、かつ求められたときには気の利いた対応ができる人が望ましいですね。働き方やコミュニケーション・スタイル、従業員へのフィードバック、ワークライフ・バランスなどに対する両文化の考え方を巧みに「翻訳」(説明・発信)でき、問題が起きた際に仲介できる人材。その人には偏らない、公平な態度や心構えが求められる上、常に両サイドの主張や不満を聞かされるため、架け橋役としての精神的な負担もありますが、問題が解決し双方が納得したとき、当人は非常に高い達成感を得ます。海外滞在歴の長い日本人がこの役割に適していますが、日本のビジネス文化に詳しい英国人を任命することも理にかなっています。規模の大きい企業なら、日本人・英国人両者から構成される体制が最適だと思います。

社内における日英文化交流の機会はいろいろ考えられますので、両文化に詳しい人材を存分に活用しないのはもったいないです。例えば、現地社員には昼休みを利用して日本人向けの気さくな英会話レッスンを担当してもらえば(フォーマルな「ビジネス英語の勉強」と名前を付けると、多忙を口実に集まりません)、そこで英国生活や英国人の働き方に関する駐在員の疑問に答える良い機会となるでしょう。同様に、日本語を学びたい現地社員も意外と多いので、会社のベネフィットとしてレッスンを提供するのも良いと思います。また、日本のビジネス習慣を社内のイントラネットで紹介することも効果的です。毎週金曜日に一つの文化的要素をイントラネットに掲載するなり、メールで配信するなり。まずは双方が互いの文化に関心や親しみを持つ機会を提供し、架け橋役はその相互理解を深めるために氷山の水中部分を説明する。コミュニケーション・アップによる仕事の効率向上が期待でき、日系企業にとっては非常に良いことではないでしょうか。

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