新型コロナウイルス – 会計上の問題
今回は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により生じている会計上の重要な問題について概説します。
ゴーイング・コンサーン
財務諸表は、経営陣に会社の清算や取引停止の意向があるか、またはそれ以外に現実的な代替策がない場合でない限り、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)基準で作成する必要があります。企業は、ゴーイング・コンサーンとして継続する能力に大きな疑問が生じる可能性のある重大な不確実性を開示する必要があります。新型コロナウイルスは、外部の資金調達へのアクセス、主要顧客の資金難、サプライチェーンの問題、人員配置の問題、株式やその他資産の突然の評価減、あるいは関連市場が一時的に完全に閉鎖することなどに関して、不確実性を拡大させています。
後発事象
貸借対照表の日付と財務諸表の承認日との間に発生する事象のことです。貸借対照表の日付の時点で存在していた状況を指すもの、およびその後に発生する状況を指すものがあります。前者は「事象を調整する」ものであり、財務諸表の数字に反映されるべきですが、後者は「事象を調整しない」もので、重要であれば開示する必要がありますが、損益計算書や貸借対照表で調整すべきではありません。2020年3月20日に閉鎖を余儀なくされたレストランの場合、そのレストランの年度末が3月31日であれば、財務上の影響は損益計算書や貸借対照表に反映されます。しかし年度末が2月28日であれば、数値は調整しないものの開示が必要になります。
資産の減損
新型コロナウイルスは、一部資産の帳簿価額に大きな影響を与え、すでに減損の兆候(困難な取引状況、景気減退、失業など)が出ています。多くの企業は、のれん代や無形資産、土地・建物、設備・機器、投資不動産、関連会社・合弁会社・子会社への投資を回収できるか否か疑問が生じます。金融資産も同様な影響を受ける可能性があります。株式の公正価値が大きく低下する場合、売掛金に対する引当金の引き上げが必要になる可能性があり、賃貸人であればテナントが支払えないことが判明しリース債権に影響を与えるかもしれません。
棚卸資産の評価減
新型コロナウイルスはサプライチェーン全体で経済的な困難を招きます。棚卸資産は全て、より低い費用と正味実現可能価格(NRV)で測定する必要があります。在庫の動きの減少や販売価格の低下、販売に必要な大幅割引、在庫の陳腐化の証拠があれば、在庫の価値を引き下げる必要が出ます。
繰延税金資産
企業の収益性の低下により、繰延税金資産が回収できない可能性があります。企業は、計上した繰延税金資産を再評価し、必要に応じて評価を引き下げる必要があります。
引当金と偶発事象
企業は、以下の点を考慮する必要があります。
①引当金と偶発債務: 従業員やサプライヤー、顧客が新型コロナウイルスの影響により企業を訴えた場合の訴訟、
②不利な契約: 原材料や輸送費の増大、ソーシャル・ディスタンシングによる生産性の低下、徹底した清掃による追加費用など、以前なら収益性の高い契約の履行に追加費用が必要な場合、
③リストラ計画と雇用の終了: 事業の全部または一部の売却、一時的または恒久的な縮小や閉鎖、および余剰人員の整理
*この記事は4月23日時点の規制や状況に基づいています。
ジェフ・ジョンソン
パートナー
BDOに9年勤務。英国会計基準(UK GAAP)や国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US GAAP)の豊富な知識を基に、監査と財務会計を専門とする。勅許会計士(ACA)の資格を持つ。