ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Thu, 21 November 2024

自然をもっと味わおう 王立公園で楽しむ歴史散歩

日々、目まぐるしく変化するロンドンの街で、変わることなく人々に愛され、憩いの場として利用されてきた公園の数々。そこには一体、どんな歴史が刻まれているのだろうか。今回はロンドンとその近郊にある8つの王立公園を、ゆかりの王族とともにご紹介。いつも何気なく足を運ぶおなじみの公園も、その成り立ちや数百年におよぶ歴史、王室にちなんだ逸話などを知ることで、ひと味もふた味も違った魅力が発見できるはずだ。(文: 黒澤里吏)

ロイヤル・パーク地図

St James’s Park & The Green Park

St James's Park

ウェストミンスター宮殿(国会議事堂)、セント・ジェームズ宮殿、バッキンガム宮殿という3大宮殿に囲まれたセント・ジェームズ・パークは、ロンドン最古の王立公園だ。約470年前までは家畜が草を食む農場で、ハンセン病患者用の病院がある場所として知られており、その病院の名が後年、そのまま公園名となった。1532年にヘンリー8世が狩猟場としてこの地を開拓し、狩猟客用に宿泊施設を建設。これが後にセント・ジェームズ宮殿となる。

公園として再設計されたのは1603年、ジェームズ1世の時代で、その際に排水機能が整い池が配された。さらに園内ではラクダやワニ、ゾウなどの動物が飼育され、ミニ動物園のような様相を呈していたようだ。

次に改変されたのは1827年、ロンドン都市計画の一環で宮廷建築家のジョン・ナッシュが新たに手を加えた時で、より自然美が活かされ洗練された印象に生まれ変わった。以来、現在に至るまで大きな変更は加えられていないという。

隣接のグリーン・パークは、華やかなセント・ジェームズ・パークとは趣が異なり閑静で落ち着いた雰囲気。1660年、ハイド・パークからセント・ジェームズ・パークまでの間を、王家の領地だけを通って行き来できるようにしたいと考えたチャールズ2世によって造られ、当初はアッパー・セント・ジェームズ・パークと呼ばれていた。

この公園はたちまち国王のお気に入りとなって来賓をもてなす際に利用されたほか、毎日のウォーキング(Constitutional)の場所ともなり、その名残がバッキンガム宮殿とガーデンとの間に通る道路 「Constitutional Hill」に見て取れる。

おすすめアクティビティ

ペリカンの餌付けを見学
ペリカン 1664年にロシアの大使が国王に番 つがい のペリカンを贈呈したのが起源。セント・ジェームズ・パークのダック・アイランドにはさまざまな鳥たちが生息しているが、ペリカン目当てにやってくる観光客も少なくない。毎日14:30から飼育係による餌付けを見ることができるので、カメラ持参でぜひ。


最寄駅 St.James's Park / Charing Cross / Green Parkほか
開園時間 St. James’s Park 5:00-24:00 / Green Park 24時間
敷地面積 St. James’s Park 0.23km2 / Green Park 0.21km2
見どころ St. James’s Park メモリアル・ガーデン、ダック・アイランド、ビクトリア女王記念碑など
ゆかりの王族
チャールズ2世多くの妾をもった好色家
チャールズ2世(1630-1685)
Charles I I


共和国を率いていたクロムウェルの死後、王政復古を果たして1661年にイングランド王となる。妻はポルトガルのブラガンサ王朝初代国王の王女キャサリン・オブ・ブラガンザ。夫婦の間に子は生まれなかったが、チャールズ2世は数多くの愛人を持ち、認知した庶子の数は12人に上る。

1746年にアッパー・セント・ジェームズ・パークがグリーン・パークと改名されるが、その由来として一説には、チャールズ2世がここで摘んだ花をほかの女性に贈ったことにキャサリン妃が激怒し、園内の花を1本残らず摘み取らせた(=残ったのは緑のみ)、という逸話からきているとも言われる。

チャールズ2世はまた、セント・ジェームズ・パークにフランスの球技「ペルメル」用のコートを設けた。これは街路(「The Mall」と「Pall Mall」)として現在も残されている。

Hyde Park & Kensington Gardens

Hyde Park & Kensington Gardens

ハイド・パークは1536年にヘンリー8世がウェストミンスター寺院からこの土地を譲り受けて以来、長きにわたり王家の狩猟場として使われていた。公園として一般に開放されるようになったのは1637年のことである。隣接のケンジントン・ガーデンズも当時はハイド・パークの一部だった。

パークの名物といえば「スピーカーズ・コーナー」だろう。1866年に改革連盟が労働者の選挙権拡大を求めて激しいデモ活動を行い、演説の権利が主張されたことから生まれたものだ。誰でも自由に演説や討論ができる場所として現在も利用されており、かつては哲学者のマルクスやソ連の初代最高指導者であるレーニン、作家のジョージ・オーウェル、詩人・デザイナーのウィリアム・モリスらもここで熱弁を振るったという。

一方、より見どころが多いのがケンジントン・ガーデンズ。ダイアナ妃の居住地だったケンジントン宮殿をはじめ、モダン・アートを扱うサーペンタイン・ギャラリー、ヴィクトリア女王の最愛の夫アルバート公の死を悼んで建造された壮麗な記念碑、季節の花々が歩道を彩るフラワー・ウォークなど趣向に富んでいる。加えてJ・M・バリーの戯曲「ピーター・パン」の舞台としても有名で、園内北東部にはピーターパン像が佇んでいる。ピーター・パンはここで迷子になり、永遠に年を取らない少年としてネバーランドの住人となったのだ。

この夏おすすめイベント

ピーターパン・シアター
ピーターパン J・M・バリーの不朽の名作「ピーター・パン」が再び舞台になって、この夏、ケンジントン・ガーデンズ内の特設会場にて上演される。最新の技術を駆使したパノラマ劇場で夢のネバーランドを再現。今までにないユニークな演出で繰り広げられるファンタジーの世界をお見逃しなく。
8月30日まで 火・土 14:00/19:00、木 14:00、日 15:00
料金: £22.50~47.50
チケット予約: 0871 386 1122


最寄駅 Lancaster Gate / Hyde Park Corner / Marble Arch / Knightsbridge ほか
開園時間 Hyde Park 5:00-24:00 / Kensington Gardens 6:00~日没
敷地面積 Hyde Park 約1.4km2 / Kensington Gardens 約1.1km2
見どころ Hyde Park ダイアナ妃記念噴水、スピーカー ズ・コーナー
Kensington Gardens ピーターパン像、サー ペンタイン・ギャラリーなど
ゆかりの王族
造園に熱意を注いだインテリ王妃
キャロライン王妃(1683-1737)
キャロライン王妃Caroline of Ansbach


ドイツはヴェルフ家の流れを汲む英国ハノーヴァー家第2代国王、ジョージ2世の妃。学問、芸術に造詣が深く、科学者ニュートンや音楽家ヘンデルなどとも親交があった。国情に通じず、思慮に欠けると言われた国王の助言役となり、当時の首相ウォルポールと連携して安定した統治を行った。

造園にも関心が高く、ケンジントン・ガーデンズを現在のような公園の形に改造し、サーペンタイン湖を設けてハイド・パークと仕切ったのは彼女である。当時、仕切りを設ける手段はフェンスが主流だったため、水路を用いる方法は斬新だった。この水路の仕切りは後に「ハハ(ha-ha)」として知られ(この水路の仕切りを初めて見た人々が驚いたことからその名が付いたという説がある)、各地で取り入れられていく。

The Regent’s Park

The Regent’s Park

17世紀半ばまで、この土地はメリルボーン・パークとして知られる国王の狩猟林だったが、清教徒革命でイングランド共和国の指導者となったクロムウェルが資金確保目的で木材を得るために樹木を伐採し、一時荒廃した。そして王政復古を経て王家に返還されるが、その後様々な人物の手に渡り紆余曲折した後、19世紀初めに時の摂政プリンス・リージェントが宮廷建築家ジョン・ナッシュに設計を依頼し、現在のような美しい公園に造り替えられた。

のんびりと散歩を楽しむなら、円周道路で囲まれた「インナー・サークル」へ。400種類、3万本以上のバラが咲き誇るクイーン・メアリー・ガーデンやイタリア式庭園、英国式庭園などが配されたパークの心臓部とでも言うべきスポットだ。園内にはまた、ジョージアン様式の米国大使の公邸をはじめ、ナッシュがデザインした豪奢な別荘、セント・ジョンズ・ロッジなど歴史的な建物もあり、往時の面影を残している。

園内北側には広々としたスポーツ・グラウンドがあり、フットボールやラグビー、クリケットなど各種スポーツを楽しむ人々の姿が多く見られる。また、2012年のロンドン・オリンピックでは自転車ロードレースの出発地点となる予定だ。

おすすめアクティビティ

スポーツ・センター「HUB」でヨガ
HUB ヨガを始めてみたいけど、どこへ行っていいのか分からない……。そんなアナタにおすすめなのがここ。ピラティスやボクササイズなど各種エクササイズのクラスを開催しており、料金も£3~6程度(学生と、カムデン&ウェストミンスター地区の居住者は10%引)。会費不要だから気軽に参加できる。


最寄駅 Regent's Park / Great Portland Street / Baker Street / Camden Town ほか
開園時間 5:00~日没
敷地面積 約2km2
見どころ ロンドン動物園、英国式庭園、イタリア式庭園、アヴェニュー・ガーデンなど
ゆかりの王族
ジョージ4世新しモノ好きな贅沢王子
ジョージ4世(1762-1830)
George IV


ハノーヴァー朝の国王。1801~20年までは、父ジョージ3世がポルフィリン症(日光誘発性皮膚障害などを生じる疾患)を煩って精神障害を悪化させたことを受けて摂政王太子、プリンス・リージェントとなり国政を執る。華美で贅沢な生活を好み多額の借金をつくったことでも知られ、皇太子時代には王室費の半分に相当する額の借金を作ったという。こうした息子への心労こそが、父ジョージ3世の病気の原因になったとも囁かれている。

そして1811年、ジョージ4世は自らの権威を示す象徴としてサマー・パレスと側近用の邸宅の建設を思い付いた。トラファルガー広場やリージェント・ストリートも設計した建築家のジョン・ナッシュは宮殿や邸宅を擁した「リージェント・パーク」の構想を打ち出すが、その後、皇太子がバッキンガム宮殿の改装に関心を移したため計画は頓挫。しかし後に見直され、同じく皇太子の名を冠したリージェント・ストリートを含む大規模な都市計画へと発展する。

Greenwich Park

Greenwich Park

園内東側に残された遺跡の数々から分かるように、パークの歴史はローマ時代まで遡るが、界隈が王室ゆかりの地となって最も栄えたのはチューダー朝時代(1485~1603)だ。現在、王立海軍大学となっている建物の前身は宮殿で、ヘンリー8世はここで生まれ、生涯の多くの時間をグリニッジで過ごした。公園が現在のような姿になったのは17世紀半ば、チャールズ2世の時代で、フランス国王ルイ14世のお抱え造園家であるアンドレ・ル・ノートルのデザインの 影響を強く受けている。

丘の上に立つかの有名な王立天文台は、大航海時代にチャールズ2世の命で、大建築家クリストファー・レンによって建てられた。その後、王室のグリニッジへの興味は徐々に薄れてゆき、18世紀初頭にはメアリー2世が宮殿を寄付、海軍病院となった後、前述の大学に生まれ変わった。またアン王妃の別荘として建てられた「クイーンズ・ハウス」は1933年に国立海洋博物館と なり、現在も公開中だ。

このような歴史的遺産の数々から、1997年にはパークを含めたグリニッジの街がユネスコ世界遺産に指定されている。


最寄駅 Greenwich, North Greenwich, Cutty Sark
開園時間 6:00~日没 (季節により異なる)
敷地面積 0.74km2
見どころ 王立天文台、国立海洋博物館、王立海軍大学、プラネタリウム、ローマ時代の遺跡、鹿のいる森、フラワー・ガーデンなど
ゆかりの王族
ジェームズ1世浪費家王妃にてんてこまい
ジェームズ1世(1566-1625)
James I


スコットランド女王メアリーの長男として生まれ、1603年、エリザベス1世の後を継いでイングランド王に即位。ジェームズ1世は男色家で男性の愛人を持っていたと言われるが、政治的な理由もあり、1589年にデンマーク王フレデリク2世の娘、アン・オブ・デンマークと結婚。アン王妃は華やかな金髪美女だったが派手で浪費癖があり、また7人の子どもがいたこともあって宮廷経費がかさみ、国の財政に影響を及ぼした。

グリニッジ・パークと宮殿は、アン王妃がジェームズ1世のお気に入りの犬を誤って撃ってしまい、それに憤慨した国王が公の場で王妃を罵倒したことに対するお詫びとして、彼女に捧げられたと言われている。

Richmond Park

Richmond Park

ロンドン郊外に位置するリッチモンド・パークは、手つかずの自然が残る広大な緑地公園だ。敷地面積は約10km2と王立公園の中でも最大で、パーク全体が自然観察保護区域となっている。王室との関わりは13世紀後半のエドワード王朝時代まで遡ると言われるが、実質的には15世紀後半、「マナー・オブ・シーン」と呼ばれていたこの界隈にヘンリー7世が宮殿を建て「リッチモンド」と改名した頃からである。

かつて歴代の王が狩猟を楽しんだ土地でもあり、今も園内に約650頭の鹿が生息している。また18世紀に来賓に向けた余興として展望台が2カ所造られ、そのうちの1つ、ヘンリー8世が狩猟の様子を眺めるために使ったと言われる丘からは、約20キロ離れたロンドン市内のセント・ポール大聖堂を眺めることができて壮観だ。

このほか、園内西側の森林地帯に第二次大戦後に造られたエキゾチック・ガーデン、イザベラ・プランテーションも必見。珍しい植物や鮮やかな花々で彩られ、季節ごとに異なる表情を楽しむことができる。中でも、春から初夏にかけて何種類ものツツジの花が咲き乱れる光景は圧巻だ。


最寄駅 Richmond
開園時間 7:00(冬は7:30)~日没
敷地面積 約10km2
見どころ イザベラ・プランテーション、野生の鹿など
ゆかりの王族
やること成すこと裏目に出る不遇の王
チャールズ1世チャールズ1世(1600-1649)
Charles I


ジェームズ1世の次男。兄ヘンリーがチフスを患い18歳で亡くなったため、父の死後に王位を継承する。だが王権神授説を信奉するがゆえ、約25年間に及ぶ在位中、議会や国民との衝突が絶えることはなかった。

当時、疫病が猛威を振るっていたロンドンを逃れてリッチモンドにやってきたチャールズ1世は、牧草地が広がるこの土地を最適な狩猟場と見込み、1637年、住民の反対を無視して狩猟用の公園を創設、2000頭の鹿を連れてきた。鹿が迷い込まないように設けた12キロにも及ぶレンガの壁は今も残っている。しかし陸路を塞がれた地元住民は激怒して一騒動となり、後に国王は数人の地主に賠償金を支払うはめになった。

Bushy Park (Hampton Court Palace)

Bushy Park (Hampton Court Palace)

中世の農場、チューダー朝時代の狩猟場、17世紀のウォーター・ガーデン、戦時中のキャ ンプ跡など、各時代の歴史の片鱗が見られるブッシー・パークは、1529年、ハンプトン・コート宮殿とともにウルジー枢機卿からヘンリー8世に贈呈され、王室の領地となった。その後は狩猟林となっていたが、1610年、チャールズ1世の時代にイングランド東部に位置するハートフォードシャーのコーン川から水を引き、19キロもの長さを誇る運河が配された。さらに大建築家クリストファー・レンがパークの中心を貫く「チェストナット・アヴェニュー」を設計し直し、ローマ神話の狩猟の女神ディアナの像を配した噴水を加えて、宮殿へと続く格調高い通路に造り替えた。広大な園内には野生林が残っているほか、趣向を凝らしたガーデンが点在している。

時間に余裕があれば、ハンプトン・コート宮殿(有料)にもぜひ立ち寄ってみたい。野心的で財力もあったウルジー枢機卿が多額の費用を投じて造り上げた壮麗な宮殿で、威風堂々とした外観にまず圧倒される。時代ごとに改築が重ねられたため、チューダー建築、バロック建築、ジョージアン建築がミックスした絢爛豪華な造り。敷地内には世界的に有名な迷路園もある。

この夏おすすめのイベント

ハンプトン・コート・フラワーショー
Hampton Court Flower Show

ハンプトン・コート・フラワーショー王立園芸団体が主催する毎年恒例の大規模な花の祭典。今年は環境問題に備えた自家菜園の提案や、ヘンリー8世の即位500年を記念し、チューダー期をテーマにヘンリー8世の6人の妃にちなんだ6つのガーデンなどを用意している。
7月7日~12日
火~土 10:00-18:30、 日 10:00-17:30 
料金: £14~ 
チケット予約 www.keithprowse.com/hosted/rhs


最寄駅 Teddington / Hampton Wick / Hampton Court
開園時間 ハンプトン・コート宮殿は10:00-18:00(冬は16:30まで)、
パークは24時間(季節により異なる場合あり)
敷地面積 約4.5km2
見どころ ディアナの噴水、チェストナット・アヴェニュー、ウッドランド・ガーデン、ウォーター・ガーデン、鹿のいる森、サギの池など ※ハンプトン・コート宮殿は入場料大人£14、子ども£7
ゆかりの王族
良くも悪くも存在感ナンバーワン
ヘンリー8世ヘンリー8世(1491-1547)
Henry VIII


チューダー朝のイングランド王。グリニッジのプラセンティア宮殿でヘンリー7世とエリザベス王妃の次男として生まれる。1501年に兄アーサーが急死したため皇太子となり、1509年、父ヘンリー7世の死をもって国王に即位。王室史上最高のインテリと評判でスポーツにも目がなく、ブッシー・パークを含む王立公園の多くは、元来、ヘンリー8世が趣味の狩猟を楽しむ場所として利用されていた。

またヘンリー8世は6人の妃を持ち、結婚、離婚を繰り返したことでも有名だ。3人目の王妃にあたるジェーン・シーモアは、ハンプトン・コート宮殿でエドワード6世を出産するも12日後に死亡。宮殿内にはジェーン王妃の幽霊が出るという噂がある。

同じくヘンリー8世の元妃で後に処刑されているキャサリン・ハワードやアン・ブーリン、そしてヘンリー8世自身の幽霊も時々顔を出すとか……。

祝・創立250周年!
世界遺産指定の王立自然植物園 Royal Botanic Gardens, Kew

Royal Botanic Gardens, Kew

今年、創立250周年を迎える世界で最も有名な植物園、キュー・ガーデンは、イングランド南西部に位置する街、テュークスベリーのケーペル卿による熱帯植物コレクションに端を発し、後にジョージ2世の長男でウェールズ公のフレデリック・ルイスの妃、オーガスタ妃が拡張して基盤を造り上げた。さらにジョージ3世によって彩りが加えられた後、ジョセフ・バンクス卿をはじめとする偉大なる植物学者たちの熱意によってコレクションは増え続け、さらに敷地が拡張されてビクトリア様式の大温室などが建設されてゆく。

キュー・ガーデンは、世界各国から集めた3万種類以上の植物を保護し、650名以上の科学者たちが研究を行っている世界最大級の植物教育研究機関でもある。それは植物の研究に力を入れ、生きた植物の収集のみならず標本や書籍の収集にも尽力した初代園長のウィリアム・フッカーとその息子ジョセフの理念が脈々と受け継がれている証だろう。なかでも、絶滅に瀕している世界の植物の種の保存を目的とした「ミレニアム・シード・バンク」の活動は、現在、世界的に大きな注目を集めている。

園内は熱帯の植物が生い茂る大温室をはじめ、水鳥たちが和やかに水浴びを楽しむ池、竹林の中に佇む日本の民家など意匠に富んでおり、歩を進めるごとに新しい世界が見られる楽しさでいっぱいだ。2006年にここで80歳の誕生会を開いたエリザベス女王もこの5月、創立250周年を祝してキューを再訪したばかり。特別ウォーキング・ツアーをはじめ、記念イベントが随時開催されているこの機会に、ぜひ足を運んでみよう。

この夏おすすめのイベント

サマー・スウィング
Summer Swing at Kew Gardens

Summer Swing at Kew Gardensジュールス・ホランドやジプシー・キングス など、日替わりでミュージシャンやバンドが園 内の特設ステージに登場する毎年大盛況のラ イブ・イベント。花火も上がってお祭り気分 たっぷりだ。すでにチケットが売り切れになっ ている日もあるので、予約はお早めに。
7月7日~11日 19:30~
料金: £30~
チケット予約: 0871 231 0834 
または www.kew.org/swing/bookinginfo.html

最寄駅 Kew Gardens
開園時間 9:30-18:30(週末は19:30まで)
敷地面積 1.2km2
見どころ 大人£13(17歳以下は大人同伴で無料)

 

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