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「看護実習」はコロナ病棟! 半袖ナマ腕で奮闘した看護学生たち
2021年9月、英国の新学期がとうとう始まりました。今回は、コロナ・ピーク期間も含めて医療現場で活躍をしている英国の看護学生について書いてみます。
看護学生は実習でGPやA&Eも含めてあちこちに配属されています。英国で医療機関にかかったことがあれば、看護学生から簡単な検査や処置を受けた方も多いのではないでしょうか。英国の小中学生は半年前から学校に戻り対面授業を続けていますが、大学教育ではそうではなかったようです。私は看護学生の実習指導と評価の担当もしており、病院近隣の複数大学の看護学生さんを実習で受け入れています。しかし、この地域の大学における看護学生の講義は夏までオンラインのみでした。大学1年生は昨年の入学以来、いまだに大学で対面講義を受けていないのです。感染対策のためだそうですが、その一方でコロナ一次ピークから看護学生はコロナ医療前線に出されてきました。2020年3月、政府が発表した新型コロナ対策の中に「医療系学生の動員」が明記されていたからです。私が招集されたコロナ病棟にも、看護学生2年生と3年生が配属されていました。
なお、医学生に関しては最終学年の医学生を数カ月繰り上げて卒業させ、名目上は「新卒医師」として現場に出していました。私のいたコロナ病棟にも新卒医師が複数いました。
国の政策のためでしょうか、コロナ当初は看護学生には給与が出ていました。ところが国の財政難で看護学生への給与システムは4カ月ほどで終了してしまい、その後最も厳しかった冬の二次ピークでは無給のままでした。
以前の号でも書きましたが、国の指針で英国ではコロナ病棟でもPPE(個人用防護具)はノースリーブのエプロンに半袖、ナマ腕をさらします。そのPPEで看護学生たちはコロナ患者の食事介助、トイレ介助や清拭*をこなしました。英国の看護学生は大学で3年間学びますが、この期間に最低2300時間の看護実習を行うことが卒業条件として国から義務付けられています。コロナ期間中でも例外はありませんでした。コロナ前線での実習を拒否すれば、その分卒業が不定期で遅れてしまいます。そのために不安を抱えながらも多くの学生たちが実習を続けざるを得なかったのです。
英国の看護学生を取り巻く環境は厳しいものがあります。2017年までは看護学生の授業料は免除、さらに無償の奨学金がもらえました。2013年に卒業をした私はこの恩恵を受けられましたが、今は多くが学生ローンで授業料や生活費を賄っています。英国看護師の給与はほかの大卒の仕事と比較しても低く、そのなかで学生ローンの返済が何年も続きます。でも、暗いニュースばかりではありません。世界的なパンデミックを経験したことで、医療に興味を持つ学生が増え、2021年9月の看護学部の入学希望が増加傾向にあることです。現場でヨタヨタになりながら仕事をしている自分たちの姿が、高校生の進路に少なからず影響を与えたのかと思うと、とても喜ばしいことです。厳しい環境でも将来に夢を持つ未来の医療従事者たちを応援してもらえたら、うれしく思います。
*患者さんの身体を拭いてあげること