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Fri, 04 April 2025

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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食べてはいけないイチゴ狩り

食べてはいけないイチゴ狩り

春が近づいてくると楽しみなのが「ピック・ユア・オウン」(Pick Your Own)です。ピック・ユア・オウンとは、農場に行って、畑で育てられている果物や野菜を好きなだけ摘むことができるというもの。子どもたちが幼いころは、車で15分くらいのところにピック・ユア・オウンをできる農場があり、春から夏にかけて、友人たちを誘って何度も出掛けたものでした。

例えば、日本でイチゴ狩りといえば、事前に入場料金を支払って、制限時間内に好きなだけイチゴを食べて良い、というものが多いですよね。英国のピック・ユア・オウンもイチゴやラズベリーなどの果物を摘むことができるのですが、日本と違うのは、そこで摘んだイチゴやラズベリーを食べてはいけないということ! 正確には、味見として一つ二つをつまむのは許されますが、お腹いっぱいになるまで食べ続けるというのは禁止されています。つまり英国でのピック・ユア・オウンでは「摘む」というアクティビティー自体が楽しみで、摘んだイチゴやラズベリー(や野菜)は持って帰るというわけです。

大抵は農場の敷地内に入ると、箱やバスケットを受け取り、その中に好きなだけ自分で摘んだ果物や野菜を入れていきます。収穫した作物については、最後に重さを量ってその分の料金だけ支払いをするというのが一般的なシステムです。


以前、取材で訪ねた農場のオーナーによれば、この国でピック・ユア・オウンが始まったのは1960年代だといいます。特に70~80年代は大変人気で、英国各地でピック・ユア・オウンが盛んだったそうです。というのも、当時、卸売業者に作物を卸している農家は、「仲介者」を通すことにより、経済的利益が制限されてしまいました。そのため、経営が苦しい状況に追い込まれてしまっていたのです。そうした難局を突破すべく、中間業者なしで、自らの手で一般消費者に商品を売ろうと、多くの農家がピック・ユア・オウンを始めたのだといいます。

農家にとっては、運送にかける時間や人手、経費を削減することができます。また、「お客さまの顔が見える」というのは、一般の人々がどういった作物を好むのか、自分の農園にいながらマーケット・リサーチができる、ということでもあったのです。

私たち消費者側にしてみても、自分の目で納得して作物を選び、その上、それを自分の手で収穫できるというのですから安心です。またスーパーでしか果物や野菜を見たことがない子どもたちにとっては、どうやってこうした作物が実っているのかを知る貴重な機会でもあります。

シーズンになったら、今年もまたピック・ユア・オウンでジューシーなイチゴとラズベリーを摘んできたいと思います。

 

マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
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