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英国では大掃除をしない!?
以前、英国在住の日本人の知人とちょうど今のような時期に話をしていたときのことです。師走に入り、年末も近づいてきたので、完璧にとはいかないまでも、お正月用に日本のおせちに似たものを作りたいので、いろいろと材料を準備していると知人が言いました。加えて「大掃除もあるのに、英国人の夫は手伝ってくれないから大変」と、話がちょっと愚痴っぽい展開に。
それを聞いていた私は「ここは日本ではないのに、やっぱりちゃんと年末の大掃除をするなんて偉いね!」と言ってしまいました。自分の横着さがバレてしまったかなと、あとで思いましたが、まあ、隠しても仕方ないこと。それにしても、そのとき、年末とはいえ、私自身は大掃除についてのプレッシャーをあまり感じないところから気付いたのが、英国では年末の大掃除はないということでした。
もちろん、クリスマスでお客さまを招く場合には、いつもより念入りに家の掃除はしますし、義弟家族や友人とニュー・イヤーズ・デー(お正月)を過ごす場合にも、できるだけ散らかっていないように気を付けてはいます。でも、日本の大掃除にあたるものは、英国では「スプリング・クリーニング」といって、春に行われるのが一般的です(なのでわが家では年末の大掃除は省略させてもらっています)。
スプリング・クリーニングは春に行われるというだけで、明確な日程が決まっているわけではありません。義母に聞いたところ「イースターのあたりを目安にしているけれど、その年によって違うわね。なんといっても大掃除をするなら天気の良い日がいいから、毎年天気と相談しながら決めているわ」とのこと。
歴史的にはパスオーバー(過ぎ越しの祭り)と呼ばれる、ユダヤの民が出エジプトしたことを記念するお祝いに由来するという説があるそうです。1週間続くパスオーバーのお祝いの1日目に家中を掃除する、という習慣があることから、それが現代のスプリング・クリーニングにつながっているとのことです。でも、それがいつから英国に伝わって、その時期にスプリング・クリーニングが行われるようになったかのデータは見つけられませんでした。
ちなみに英国では、学校の掃除はクリーナーの方がするため、日本のように小、中学校で子どもたちが教室や校庭を掃除するというルールはありません。そのため、掃除を子どもに教えるのは家庭(保護者)の役目。夫は中学生になったころに掃除の仕方を覚えたといいますが、わが家では小学校時代に一緒に練習しはじめました。来春のスプリング・クリーニングでも子どもたちが活躍してくれることを願うばかりです。