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クリスマス・ツリーのゆくえ
あけましておめでとうございます。2022年のお正月はいかがお過ごしでしたでしょうか。
さて、英国在住の皆さんはご存知かと思いますが、この国のクリスマスは12月25日で終わりではありません。英国で初めて新年を迎えたときには、英国の人々は面倒くさがってクリスマス飾りを新年までだしっぱなしにしているのかと勘違いしていましたが、正確には十二夜と呼ばれる1月5日までクリスマスのお祝いが続いています。そのため皆さんも、お正月三が日を過ぎてもクリスマス・ツリーやデコレーションを飾っているのではないでしょうか。
一方で、6日を過ぎてクリスマス飾りを残しておくのは縁起が悪いというので、5日夜には電飾やデコレーションは全て見事に消え去ります。そして、6日の朝、目にするのが、約1カ月近くにわたるお役目を終え、ちょっと疲れた感じで歩道のあちこちに置かれている生木のクリスマス・ツリー。夫と結婚してすぐの頃、当時住んでいたグリニッジの住宅街でこの光景を目撃。そのときは、「英国では皆こんなにも本物のツリーを飾っていたんだ!」と打ち捨てられた(実際はリサイクル回収を待っている)ツリーの多さに感動すら覚えました。だって、東京に住んでいたときは、一人暮らしの自分の部屋にクリスマス・ツリーを飾ったこともなく、生木のツリーなんて、豪華なホテルやレストランでしか見たことがなかったのです。
ところで皆さんの家のツリーは生木ですか? それとも人工のものでしょうか? 近年は環境問題への懸念から、人々の意識はよりサステナブルなものへと向かっています。そのため、生木と人工のツリーのどちらが環境に優しいのかの議論をメディアで度々見かけます。その一つが一般紙「ガーディアン」。記事では、2021年は英国内で約800万本の生木のクリスマス・ツリーが購入されると予想されていました。そして、「毎年使い捨てられる生木を海外から輸入するのは、CO2排出量を増やしてしまう」「人工のツリーの方が長く使えて環境への悪影響が少ない」という意見があると紹介する一方で、近年は英国内での生木の生産が増え、リサイクル可能な国産の本物の木を買う方が環境に優しい、というデータがあると伝えています。また、国内の生産者から生木をレンタルして、使用後は返却し、また来年それをレンタルするというシステムも登場しているといいます。
ヴィクトリア女王とその夫、ドイツ出身のアルバート公が英国に広めたといわれるツリーの歴史は170年以上にも及びます。環境問題に配慮しつつも、英国の人々はきっとこの先もクリスマス・ツリーの伝統を受け継いでいくような気がします。