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カードを贈り合う習慣
現在もロックダウンが続いている英国。外出は制限されていますが、生活必需品の買い出しは許可されているので、1週間ぶりに買い物に行ってきました。
久しぶりに行ったスーパーの入り口付近の陳列棚にずらりと並べられていたのは、母の日のカードでした。日本と違い、英国では毎年母の日が変わります(移動祝祭日であるイースターの3週間前の日曜日が母の日とされています)。今年は3月14日が母の日です。日本の母の日がある5月に英国で母の日のカードを入手するのは難しいので、例年、義母の分と一緒に、日本の母宛に送るカードも一緒に買っておくようにしています。夫と私からの分と合わせて、子どもたちからおばあちゃん宛に送るカードも購入します。たくさん並んだカードを見比べながら気付くのは、祖母宛のカードに書かれたこの国での「おばあさん」の呼び方の多彩さです。「Grandma」「Nan」「Granny」「Nanny」「Grandmother」などがあり、それぞれの呼び方に合わせて選べるほどカードの種類が豊富なことに驚きます。
それにしても、英国に暮らすようになって感心したのが、この国の人々の、グリーティング・カードを贈る習慣です。母の日はもちろん、父の日、バレンタイン・デー、誕生日、クリスマス、イースター、入学祝いに卒業祝い。また、お礼状としてのサンキュー・カードも頻繁にやりとりされています。メールやデジタルのカードが当たり前になった現在でも、英国の人々は郵便で紙のカードを送り合うことをやめようとはしません。それが証拠に、2019年には英国の人々がグリーティング・カードに使ったのは17億ポンド(約2517億円)にも上ると言います。
ある程度の大きさの街であれば、必ず一軒はカード専門のお店があります。スーパーはもちろんのこと、街角にあるニュースエージェントと呼ばれるコンビニのようなお店でも、たくさんの種類のカードが売られています。
また、カードはポストカードではなく、二つ折りのものが一般的です。そして、英国の人々は、受け取ったカードをそのまま仕舞い込んだりはしません。いつでも眺められるように、マントルピースの上や、窓辺に並べて飾っておくのです。英国の家は道路側にリビング・ルームがあることが多く、カーテンを開けた窓からは家の中が見えます。住宅街を歩いていて、ふと目をやると、窓辺に並べられたバースデー・カードを見かけることが度々あります。そんなときは、なんだか幸せのお裾分けをしてもらったような気持ちになって、ついにっこりしてしまいます。