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Sat, 23 November 2024

第45回 オールドゲート・ポンプの蛇口は狼の口

オールドゲート駅の西側にオールドゲート・ポンプという共用栓があります。13世紀から利用されていた井戸ですが、19世紀後半に流行した疫病の原因とされました。でも1876年、水道会社のニュー・リバー・カンパニーが水道を引いてこれを解決。水道の蛇口には狼の頭がかたどられ、シティで最後に狼を撃った場所、という伝承が付け加えられました。

狼の水道口
オールドゲート・ポンプにある狼の水道口

都市と飲料水の問題は悩ましく、古くからシティは頭を痛めていました。ムーアゲートからシティ中心部に流れ込んでいたウォールブルックはすぐにドブ川になり、聖ポール大聖堂の西を流れるフリート川も染物や皮革業の汚水で飲めなくなってしまいます。また、テムズ河は潮の干満があるため、取水のタイミングが限られます。そこでシティは13世紀前半、西ロンドンを流れるタイバーン川とウェストボーン川から水道を引いてくることを考えました。

グレート・コンジットのプラーク
シティの チープサイドにあるグレート・コンジットのプラーク

タイバーン川は南ハムステッドからメイフェア経由でランベス、また、ウェストボーン川は西ハムステッドからナイツブリッジ経由でチェルシーにてテムズ河に合流します(この川は今でもスローン・ストリートの地下を流れ、地下鉄スローン・スクエア駅ホームの上方には水道橋が見えます)。1245年、現在のボンド・ストリート駅北口近辺から木と鉛のパイプを用いてシティまで、約4キロに及ぶ「偉大な水道管(グレート・コンジット)」を敷設し、15世紀半ばにはパディントンまで延長させました。

ウェストボーン川
スローン・スクエア駅から見上げるとウェストボーン川の水道橋が

17世紀に入り、シティの人口は急増し、水不足が深刻化します。それを救ったのがヒュー・ミドルトンでした。彼はロンドン郊外のハートフォードシャーを流れるリー川から、イズリントン経由でシティまで水を引きます。優 れた土木技術により、約60キロにも及ぶこの水路の取水口と終点の標高差はわずか5メートルでした。現在、サドラーズ・ウェルズ劇場の西隣に配水池と瀟洒な建物がありますが、ここが当時の水道会社の本社でした。

水道会社本部
かつての水道会社本部は現在フラットに

日本の近代的水道システムは、1887年、英国人技師ヘンリー・パーマーにより横浜に導入されました。市内にはスコットランド製の獅子頭共用栓が置かれ、獅子の口から水が出ました。日本では竜が水神なのでそれはやがて竜頭に変わり、「蛇口」の語源になります。ちなみに冒頭のオールドゲート・ポンプの「蛇口」が狼なのは、ヒュー・ミドルトンの紋章に狼が使われ、彼がシティの水神と思われているためだと寅七は考えています。

ヒュー・ミドルトン
ヒュー・ミドルトンはシティの水道の救世主

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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