1984
1984(1984 / 英)
1984年、個人の行動や思想が徹底的に制限された全体主義国家で、自我に目覚めたウィンストン。やがて思想を共にするジュリアと恋に落ちるが……。
監督 | Michael Radford |
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出演 | John Hurt, Richard Burton, Suzanna Hamilton ほか |
ロケ地 | Cheshire Street |
アクセス | 地下鉄Liverpool Street駅から徒歩 |
- 今週は、英国を代表する作家、ジョージ・オーウェルの、かの有名なディストピア小説「1984年」を映画化した作品です。
- 小説が発表されたのは1949年ですが、物語の舞台はタイトルが示しているように1984年ということで、当時としては近未来小説だったわけですね。1984年というと既に今から27年も前ですし、原作が書かれてからは半世紀が過ぎ去っていますが、今でも古さを感じさせないと言いますか……。
- 核戦争後、オセアニア、ユーラシア、イースタシアという3大国により世界は分割統治され、思想や行動が完全に制限された全体主義体制がとられているという設定なので、暗く、絶望的で退廃的なのですが。
- 結局、ある視点から見れば、人類は今も同じような権威闘争の最中にあるということなのか。実際、どこぞの国は現在まさに似たような状況にあるしな。
- 見てのとおり1984年に映画化されているわけですが、噂によると、日付まで忠実に合わせて撮影したらしいですよ。
- 日付?
- ほら、劇中で主人公のウィンストンが日記をつけてるじゃないですか。で、その内容が映像として再現されるでしょう。そのシーンの撮影を、日記の日付と同日に行っているらしいんです。
- すごいこだわりようだね。
- 本作はまず「2分間憎悪」と呼ばれる国民に課されている日課をこなすシーンから始まります。スクリーンに映し出されたビッグ・ブラザー、つまり党の最高指導者が、最大の敵としている陰謀者エマニュエル・ゴールドスタインがいかに悪かを説き、それを受けた国民が憎悪を声に出して表現するという時間です。もちろん国民はマインド・コントロールされ、そのように刷り込まれているんですが。第一、彼らは生のビッグ・ブラザーを見たことさえないんです。
- こちらの場面はウィルトシャー州チッペナム近郊にあります元英国空軍基地「RAF Hullavington」で撮影されています。
- ビッグ・ブラザー・イズ・ウォッチング・ユー」。今やあのリアリティー番組の方が知られているんじゃないかと思ってしまうが、このキャッチフレーズも、もちろんこの作品が基になってるしな。
- はい。行動を常に監視され、思考することや自由に恋愛することは禁止されている。物事を記録することも許されず、史実が常に改ざんされているような世界ですから、ウィンストンやジュリアのような異分子が生まれるのはごく自然でしょう。しかしそれが見つかれば、彼らは「愛情省」と呼ばれる政府機関で激しい尋問と拷問を受け、人格を矯正されることになるのです。ちなみに彼ら無産階級が住むエリアには、ドッグランズにあるガス工場「Beckton Gas Works」の跡地が使われていますね。
- こっそりと日記をつけ始めるウィンストンの脳裏に、ユートピアの象徴のような形で時々、ドアの向こうに緑の丘が広がる景色が映し出されますよね。こちらはウィルトシャー州はデヴァイズという町の近くにある「Roundway Hill」が使われています。
- 抑圧されていた感情が刺激されたウィンストンはまた、闇の骨董屋を訪れて、過去の片鱗が刻まれた置物を購入したりするんだよな。
- 骨董屋が立つ通りは、今やお洒落なショップが立ち並ぶイースト・ロンドンのCheshire Streetで撮影されていますね。
英国にいて思うのが、一見「常識的に考えたら反論や再考の余地なしでは」という物事に対しても、反論したり別の角度から意見を言ったりする人が必ずいるということだ。 私たちが今、暮らしている環境は本作の世界のような極端な状況ではないけれど、でも今、与えられている状況にもっと疑問を持ってもいいよね。考えることをやめたら、オセアニア国の国民と結局のところ、大差なくなるような気がするしな。
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