My Beautiful Laundrette(1985 / 英)
マイ・ビューティフル・ランドレット
パキスタン系2世の青年が、移民排斥主義者の幼なじみを雇い、ビジネスを開始するが……。
Photo by Takami Tsukui
監督 | Stephen Frears |
---|---|
出演 | Gordon Warnecke, Daniel Day-Lewis, Saeed Jaffreyほか |
ロケ地 | 239 Queenstown Road, London SW11 (オマールと父が住むフラット) |
アクセス | ナショナル・レイル Queenstown Road駅から徒歩 |
- 今回はまたまた私のお気に入りの一本だ。いわゆる単館系作品だが、なかなかの名作だと思うぞ。
- 元はChannel 4のTV映画として制作されたのですが、試写で好評だったため、エディンバラ国際映画祭に出品したところ反響を呼び、劇場公開されることになったという作品ですね。サッチャー政権下の南ロンドンを舞台に、パキスタン系2世の青年オマールが、事業家の叔父が所有するコイン・ランドリーの経営を任され、労働者階級の白人でかつては移民排斥主義者でもあった幼なじみのジョニーを雇い、ビジネスを成功させようとするのですが……。
- ダニエル・デイ・ルイスの出世作ですね。米国では彼が出演しているジェームズ・アイボリー監督の「眺めのいい部屋」と同日に公開され、こちらでは気品溢れるインテリ貴族を演じているため、そのギャップに驚き、絶賛した人が多かったようです。
- 僕はこの作品、随分前に日本で観たんですが、今、改めて観ると、移民社会の実情がひしひしと感じられて感慨深いですね。リアルでシビアな社会派映画である半面、80年代らしいバブリーでファニーな雰囲気もところどころに見られて面白い。
- 悲観と楽観が混じり合っているような感じだよな。移民問題、階級による格差、同性愛など、英国度120%じゃないか?
- オマールのお父さんがまた、理想主義の象徴として訴えかけますよね。2人が暮らすフラットはロンドン南部、バタシー地区のQueenstown Road 239番地です。叔父の娘、タニアが最後に意を決して旅立つ駅、ナショナル・レイルのQueenstown Road Battersea駅が、このフラットの窓から何度となく見えていますね。ちなみにバタシー地区は、今でこそ高級マンションが並ぶエリアになってきていますが、かつては労働者階級の人々が住む、治安の悪い地区として知られていました。
- オマールが久しぶりにジョニーと再会するシーンも、このすぐ近くで撮影されています。Battersea Park駅近辺の、Stewarts RoadとAscalon Streetが交わった辺りの高架下がその現場ですね。
- そして、彼らが華々しくリニューアル・オープンするコイン・ランドリー「パウダーズ」は、近隣のランベス地区、Vauxhall駅近くのWilcox Road 11番地が使われています。偶然にも、道を挟んだ隣に本物のランドリー・ショップがありますが、こことは全く関係ありません(笑)。
- オマールは、今や単なるアル中の負け犬にしか見えない父を、家族として愛しながらもどこかで嫌悪し、自分が社会で生き抜く方法を模索している。そして、一族の中でも父とは対極の立場にいる拝金主義の叔父さんの下で財を成そうとする。一方、労働者階級出身のジョニーは、いわゆるアングロ・サクソンの英国人でありながらも、この社会では何のチャンスも得られず、日々ジレンマを感じ、また知識人であるオマールの父を尊敬しているんだな。
- 叔父の愛人である、白人のレイチェルもまたジョニーと同様の存在ですよね。
- そのレイチェルを嫌悪するタニアの視点もまた見逃せません。うーん、矛盾と葛藤と愛憎が渦巻いていますね(笑)。
- そう言うと何か濃いが、その実、絶妙にドライな仕上がりなんだな。それが本作を好きな理由の一つでもあるんだけどね。
登場人物はみな、世知辛い世の中で多くの矛盾や葛藤と闘いながら生きていて、それが時に深刻な状況を生んだりしているが、それでも彼らは希望を捨てていない。それどころか貪欲でしたたかだ。オマールの屈託のない性格、また彼とジョニーとの秘密の関係も、弾ける泡の効果音とともに軽妙な印象を添えている。「この国で誰が誰に何をしたかを知るために、大学で勉強して知識を身に付けろ」というオマールのお父さんの言葉が心に響くな。
< 前 | 次 > |
---|