Somers Town(2008 / 英)
サマーズ・タウン(日本未公開)
ノッティンガム出身の家出少年と、ポーランド人 の少年。孤独な2人がロンドンで出会い……。
監督 | Shane Meadows |
---|---|
出演 | Thomas Turgoose, Piotr Jagiello, Ireneusz Czopほか |
ロケ地 | Golden Tulip Café, Somers Town, London |
アクセス | London・Euston駅とSt. Pancras駅の中間。Phoenix Road沿い 50 Phoenix Rd, London NW1 1ES |
Tel | 020 7383 4551 |
Web | www.stokesaycourt.com |
- シェーン・メドウズ監督といえば80年代のスキンヘッド・カルチャーを描いた自伝的青春映画「ディス・イズ・イングランド」ですよね。ケン・ローチ監督やマイク・リー監督に続き、リアルな英国社会を描き出す作家として注目されています。
- その監督が初めてロンドンを舞台に撮った映画がこれなんだな。「ディス・イズ〜」で主役の少年を演じたトーマス・ターグース君が本作にも出ているが、相変わらずいい味出してるね。
- 「ディス・イズ〜」からたった2年しか経っていないのに、ずいぶん成長したように見えますね。正直、僕の30代の英国人の友人に表情や口調がよく似てるんですわ。
- 彼は、人懐っこい少年のあどけなさとともに、どこか哀愁漂う成熟した雰囲気を持っていますよね。コメディー俳優としてのセンスが備わっているように見えます。
- ところで、この映画のタイトルにもなっている「サマーズ・タウン」だが……。
- はい、これはユーストン駅とセント・パンクラス駅の間にあるエリアの名称ですね。詳しく言うとEversholt StreetとPancras Roadに挟まれた、Chalton Street 周辺のエリアです。17世紀の大法官で後に男爵となったジョン・サマーズが当時、この区画を手中に収めていたことが名前の由来です。フランス革命時には亡命者たちの避難所になるなど、歴史的にも興味深いエリアなのですが、実はロンドンの人にもその名をあまり知られていないらしいんですよ。本作はエンディングのパリのシーンを除き、すべてこの、1km2ほどのエリア内で、たったの10日間で撮影されたそうです。
- 主役はターグース君扮する英国人の家出少年トモとポーランド人の少年マレックですが、マレックがこの町にやってきたのは、セント・パンクラス駅のユーロスター開通工事に伴い、父親が職を得たためです。いかにも今のロンドンといった設定ですね。
- 2人が出会うカフェは実在するのかな?
- もちろんです。「Golden Tulip Café」という、昔から値段が変わっていないような、ローカルなお店です。
- ちなみに、憧れのフランス人の店員マリアが急に姿を消してしまってガッカリしたトモとマレックが、木馬に股がりながらブツクサ言うシーンがありますよね。あれは、このカフェの近くにある「Polygon Road Open Space」という小さな公園で撮られていますね。
- そういえば、トモとマレックがお店に行くと、 マリアがフランス人のおじいさんの話相手になっている場面があったでしょう。「何話してるのかなあ」とトモが言えば、マレックが「さあ、フランスのことじゃない?」なんて言って、2人でうっとり彼女を眺めているシーンです。
- おお、覚えてるぞ。
- 実はあのおじいさん、自分の胃腸の具合や便通の話をしているらしいですよ。フランス語が分かる人は、きっと笑えるんでしょうねえ。
- 前日のトモの腹痛からの流れというか、オチだな。うーん、芸が細かいね。個人的にはグラハム役のペリー・ベンソンがツボだがな。彼、最高じゃないか?
- 彼も「ディス・イズ〜」組ですね。しかもペリーさん、偶然にも一家がサマーズ・タウン出身なんだそうです。
- どうりで馴染んでるわけだ(笑)。
セント・パンクラス周辺の開発地区、ポーランド人の労働者、孤独な少年……と、さりげなく現代のロンドンを浮き彫りにしながら、2人の少年が不器用にも心を通わせ、1人の女性に恋心を抱く様子をコミカルに描いた一本だ。手探りで今を生きる少年たちの姿を、ノスタルジックなモノクロ映像で淡々と描き出しているのもいい。背景や状況は違えど、誰もがふと自身の青春時代や淡い初恋を思い出さずにいられない、そんな、静かな情感にあふれた名作だと思うぞ。
< 前 | 次 > |
---|