ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 29 March 2024

英文レターのいろは

うろ覚えの単語や言い回しも、面と向かってのやり取りなら
声の調子やジョークでごまかしが利く。
でも、書面となれば話は別だ。
英会話にほとんど困らない人でも、
つい敬遠しがちなのが英文レターの作成だろう。
特に英国は、英語圏の中でも際立って慣習を重視する国。
失礼があったり恥をかいたりしないよう、
英国式レターの基本を押さえて堂々と文をしたためよう。
今回は、特に書簡に絞ってご紹介する。(Shoko Rudquist)

基本編

レイアウト

まずは、基本の基本、レイアウトから確認しよう。
英文レターのレイアウトには数種の方式があるが、
現代英国の基本形と思しいのはこの形。
差出人の住所と日付を右寄せにするのが特徴だ。

差出人の氏名・住所
英国では、右上、右寄せが一般的。1行目に氏名、2行目から住所を。求人への応募などなら、電話番号やE-mail アドレスも忘れずに書いておこう。

日付
日付は必ず必要。差出人の連絡先の下に1、2行空けて記入する。書き方の順序は「日、月、年」。月名はアルファベットで、そのほかは数字で記入しよう。

受取人の氏名・住所
左寄せで、差出人氏名の2、3行下から始めてOK。1行目に氏名、2行目から住所を。名前には、「Mr.」「Ms.」といった敬称を付けるのを忘れずに。ただし英国の場合はこのほかにも様々な敬称が存在するので、失礼のないようしっかり確認してからしたためよう。また会社宛の場合は、受取人氏名のすぐ後に受取人の役職を、そして会社名、会社住所と続ける。

敬辞
「Dear」から始まる1行がここに来る。右寄せの日付より下に来るように始める。名前の後にはコンマを忘れずに。

本文
敬辞の後、1、2行空けて開始。正式には、各段落の始めを5字分インデントすることになっているが、最近では省略されることも多い。段落の間は1行ずつ空ける。

結辞
和文の「敬具」や「草々」に当たる「Yours sincerely,」や「Best regards,」といった句が入る。受取人との関係や受取人の位に応じて様々なパターンが存在する。右寄せの場合と左寄せの場合がある。伝統的には右寄せだが、最近では正式な書簡でも左寄せOK とされている。最後にコンマを忘れずに。

署名
結辞のすぐ下に、自筆でサインを。そのすぐ下に、氏名をタイプ。

各部位の形式

ここからは、各部位の形式をもう少し詳しく見ていこう。当たり前だと思っていることでも、意外と間違っていたりするので要注意。これまであいまいにしてきたことも、ここで一度すっきり整理してしまおう。

敬辞

英文レターを作成する際、本文に次いで重要とも言えるのが、和文の「○○様」に当たる敬辞。特に英国では、称号が複数存在することもあり、間違いを誘発しやすい部位でもある。失礼のないよう、基本を押さえた上で、十分に確認してから投函しよう。ここでは、一般的に多用される文面の例をご紹介。最後にコンマを付けることも忘れずに。

受取人の氏名や性別などがはっきりしない場合

ご担当者様へTo Whom It May Concern,
拝啓Dear Sir and Madam, Dear Sir or Madam, Dear Sir/Madam,
拝啓(複数の女性の場合)Dear Madams,
拝啓(複数の男性の場合)Dear Sirs,
皆様Dear All,

受取人が特定の敬称を所有している場合

教授・高等教育機関の最高位宛Dear Prof. Brown,
医師・博士宛Dear Dr. O’Rourke,
男性のナイト爵宛Dear Sir Henry, Dear Sir Henry Douglas,
女性のナイト爵宛Dear Dame Mary, Dear Dame Mary Houston
男爵以上の貴族・一部の政治家宛Dear Lord (Lady) Knightsbridge,

受取人の名前が分かっている場合

最もカジュアルな例Dear David, Dear Sophie,
フォーマルかつ一般的な例Dear Mr. Brown, Dear Ms. Corny,
  • 「Dear」の後にフルネームを書くのは間違え。姓か名かどちらかだけでOK。
    × Dear Mr. David Brown, ×Ms. Sophie Corny,
  • 女性の場合、未婚 / 既婚にかかわらず、最近では「Ms.」を用いることが多い。
  • 「Prof.」は「Dr.」より高位なため、医師免許や博士号を持っていても「Dr.」とするのは失礼に当たる。また、これらの後に来るのは姓。封筒にはフルネームを記す。
  • 「Sir」や「Dame」の後にはフルネームか、名のみ。姓だけ書くのは間違え。
    ×Dear Sir Douglas,
  • 「Lord」や「Lady」の後に名だけを書くのは間違え。この敬称の後に続くのは姓のみ。
    ×Dear Lord Henry, ×Dear Lady Mary,
  • 「Lord」や「Lady」宛の封筒の宛名は、※The Rt.Hon. the Lord(Lady) とする。
    ※The Right Honourable の略。

本文

英文レターは、英語の論文と同じでまず始めに結論を明確にするのが基本。その後、理由を簡潔に説明する形が望ましい。文章は短めに区切り、一文は18語程度にとどめるのが理想的とされているが、あまりこだわり過ぎて気持ちが伝わらないのも考えもの。むしろ、内容が伝わりやすく書かれているか、言葉の反復がないかなどを確認することから始めよう。

書き出し

お元気ですか。How are things going with you? / Hope you are well.
初めてお手紙差し上げます。I am writing you for the first time.
頂いたお手紙の件ですが、Referring to your letter,
〜についてお知らせしたく、I am writing to inform you 〜
お返事が遅れ申し訳ありません。Please excuse my belated replay.
ケンブリッジ滞在中は大変お世話になり、どうもありがとうございました。I would like to thank you for the hospitality extended to me during my visit to Cambridge.

個人的な手紙の場合は特に、結論から書くとはいってもいきなり本題に入っては相手も面食らうと言うもの。日本語の手紙と同じように、相手を気遣う一文を入れるなどすれば好印象だ。

末文

ご不明な点などあれば、何なりとお知らせください。
Should you have any question, please do not hesitate to contact me.
お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
Thank you for your time and assistance.
ご検討いただければ幸いです。
Your kind consideration of this matter would be sincerely appreciated.
(お願いをご検討いただくことについて)先にお礼を申し上げます。
Thank you very much in advance.
早めにお返事いただければうれしく存じます。
I'd appreciate your reply as soon as possible.
この手紙を受け取られてから2日以内に、確認のお電話を頂けると幸いです。
Can you please confirm that you have received the letter by calling me, within two days of receiving it?

末文は、やや形式的なものではあるものの、いつまでに返事が欲しいか分かっている場合などはそれを知らせるのにちょうどいい役割を果たす。日本語と違い期限を明記することは失礼に当たらないので、うまく活用して効率アップを目指そう。

結辞

和文の「敬具」や「草々」に当たる結辞にも、色々なパターンがある。
フォーマル度のレベルを知って、自由自在に使いこなそう。


最もフォーマル

よろしくお願い申し上げます。Yours respectfully,

フォーマルかつ一般的

よろしくお願いします。 Yours sincerely,(「Dear Mr. Brown,」など、受取人の名前が分かっている場合
Yours faithfully,(「Dear Sir/Madam」など、受取人の氏名がはっきりしない場合)

ややカジュアル

よろしく。Yours cordially,

最もカジュアル

では。Kindest regards, Best regards, Best wishes, Regards,

そのほか

ごきげんようAll the best,
感謝を込めて(礼状)Yours gratefully,
心を込めて(近親者に)Yours, With love, Love,

たくさん選択肢があって戸惑うかもしれないが、一般的には「Yours sincerely,(受取人の氏名がはっきりしない場合は「Yours faithfully,」)」が無難。爵位を持つ人物や政治家、教授宛などでも問題なく使えるので、迷ったらとりあえずこれでいこう。


応用編

ここでは、英国に暮らしていてよく遭遇する場面を想定して、英文レターのひな形をご紹介。状況に合わせて詳細を変更すれば、英国生活怖いものなし。

子供が学校を病欠した理由を、担任に知らせたいとき

Dear[受取人氏名],

My son[差出人の子供氏名] was absent from school between Monday 3 September and Thursday 6 September.

He had a high temperature and suffered a stomachache on the Monday morning as a result of catching a bad cold, and he was confined to bed for most of the remainder of the week. Thankfully, he has now fully recovered.

Can you please confirm that you have received the letter by calling me on my mobile,[携帯電話番号].

Thank you in anticipation of your help.

Yours sincerely,
[差出人氏名]

英国の学校では、子供が自分でタイプ作成したものにサインして提出してくるのを避けるため、親が学校に連絡する場合は手書きのレターが好まれるようだ。さらに、レター受領後に確認の電話をもらえるようお願いしておけば、先生も親も安心。直接話すことでコミュニケーションの円滑化にも繋がり一石二鳥。

銀行の口座を閉めたいとき

[受取人氏名]
[役職]
[銀行名]
[支店の住所]

Dear[受取人氏名],

Further to our telephone conversation yesterday I would like to confirm that I wish for my savings account, number[口座番号], be closed. This account is in my full name, [差出人氏名].

I further wish for the outstanding balance of this account, £18,260.00 to be transferred to my current account, number[口座番号], also in the name,[差出人氏名].

I will be confirming on Monday that both the closure and the transfer have taken place. Should there be any problems with either action please let me know on[電話番号].

Yours sincerely,
[差出人氏名]

受取人の役職は、受取人氏名のすぐ後に。その後、通常通り銀行名と住所を記そう。たとえ手紙を送る以前に担当者と話をしていたとしても、口座番号は必ず明記したい。手紙のコピーを保管しておくことも重要だ。また、金銭が絡むレターは書留で送ることをお勧めする。

借りている家の大家に、いくつか修理を頼みたいとき

Dear[受取人氏名],

I am currently your tenant at[住所], and am writing to notify you that the property requires some repairs.

1. The pipe to the toilet has begun to leak. 2. A gutter at the back of the house has broken free from the roof.

These issues are listed as being the landlord's responsibility under the terms of my tenancy agreement.

My mobile number is[携帯電話番号] and my e-mail address is[メール・アドレス]. Please let me know when workmen will be at the property, though I will require at least 24 hours notice. If my wife or I are unable to be home on the decided day, I would appreciate you escorting the workmen inside as per the terms of my tenancy agreement.

I look forward to hearing from you soon. Thank you for your time and assistance.

Yours sincerely,
[差出人氏名]

誰かに何かを依頼する場合は、名前と住所はもちろん、連絡を取り合うのに適した時間帯や方法を明確にしておきたい。また上記のような場合なら、あらかじめ契約書を確認し、引き合いに出すのも一つの手だ。全体的に簡潔にしたため、依頼内容が自分の権利であることを堂々と主張しよう。


不良品の交換 / 修理を頼みたいとき

Dear Sir or Madam,

Complaint about faulty goods I bought a washing machine from you on 25 August 2012. I paid £199.99.
I now find the goods have the following fault:

The machine stops working after 20 minutes and won't work again for at least an hour.

Under the Sale of Goods Act 1979 (as amended) goods you sold must be fit for purpose. I request that you repair the goods at no cost to me.

I have enclosed a copy of the receipt in support of my claim.

Please respond within 14 days of receiving this letter.

Yours faithfully,
[差出人氏名]

英国では、「 Sale of Goods Act 1979(動産売買法)」に基づき、販売されている商品のクオリティーや寿命などが、商品説明と一致していることが義務付けられている。このことを明記しつつ、購入日時、価格、不良箇所、いつまでに返事が欲しいかも記す。また今回のようにカスタマー・サービスなどに連絡する場合は、主な理由を本文1行目に記しておこう。レシートを同封する際には、コピーを保管しておくことも大切。手紙自体のコピーも取っておけば安心だ。

 

この記事を気に入っていただけたら、ぜひ任意の金額でサポートをお願いします。

  • Facebook

*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

日系に強い会計事務所 グリーンバック・アラン お引越しはコヤナギワールドワイド Sakura Dental 不動産を購入してみませんか LONDON-TOKYO

Embassy 202403 JRpass

英国ニュースダイジェストを応援する

定期購読 寄付
ロンドン・レストランガイド
ブログ