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「隣の人はコロナ陽性」になる英国で必要なこと
英国ではコロナ感染対策の法的規制を全廃され、コロナ陽性であっても自主隔離の法的な規制がなくなりましたね。また4月からは無料のPCR検査や簡易検査(Lateral Flow Test)も一部を除いて廃止されることになりました。確かにジョンソン首相の言う「コロナと共に生きる」プランはどこかの時点で必須となってくるでしょう。ただし、一度に解除を進めてしまっていいのでしょうか?今回は感染規制の解除とコロナ後遺症について書いてみます。
先日、病欠中の同僚のクレアがお菓子を持って職場に顔を出しに来ました。クレアは1月上旬にコロナ感染をして以来、いまだに病欠のまま。感染前は健康で基礎疾患はなし、ワクチンも3回受けています。そのせいかコロナ症状は軽く在宅療養で十分だったのですが、いまだに呼吸器系に問題が残っています。勤務先の病院の呼吸器内科の外来受診の後に立ち寄ってくれたのですが、普通に立っているだけなのに肩で息をして、息継ぎなしでは会話ができない状態です。英国ではコロナ感染者の50人に1人の割合で、クレアのようにコロナ後遺症に苦しむ人がいるとの報告もあります。実際にコロナ後遺症を抱える患者さんに何回か会いましたが、患者さんのなかには呼吸苦のために外出をするときには車いすを使う方もいます。基礎疾患はコロナ以前はなし、感染の最中も軽症の方が多く在宅療養。年齢的にも車いすと無縁の方がほとんどでした。しかし感染から半年以上経っても呼吸苦が続き、「ある程度の距離」を歩くと呼吸ができなくなるような感じになるそうで、それが怖くて病院の駐車場からは車いすに乗ってくるのです。
ワクチンをはじめとして、コロナ感染予防に対する研究は世界中で行われ、重症患者数の大幅減少などその効果が表れ始めています。その一方で、コロナ感染をした後の回復過程に関しては、まだまだこれからの分野です。英語でこれを「long COVID」と言いますが、それは具体的にどのくらいの長さを指すのか、現段階では確定できていません。
別の同僚アリソンはコロナ感染から1年以上が経ちます。3カ月ほどの病欠を経て職場復帰をしましたが、今でも時おり呼吸苦の症状が出て通院が必要です。このように長期化する可能性を考えると、医療面はもちろんですが、病気休暇中の取得日数の限度、給与補償、通院のための休暇は病欠扱いになるのかなど、「コロナ後遺症の患者」のための法的整備も必要になってくる気がします。NHSの職員の病欠規定でさえ、コロナ後遺症に関する一応のルールはありますが、現在見直し中とされています。患者にとってはライフラインともいえる点をクリアせずに「コロナと共に生きていこう、だから陽性者も隔離の必要はなし!」と言われても、手放しに安心できるのでしょうか?
私たちができることは、手洗いなどの常識的な感染対策を継続することだと思います。もしすでに感染をしてコロナ後遺症と思われる症状がある場合は、日付の入った記録を取ることをお勧めします。
本当の意味で「コロナと共に生きる」日が来ることを、ただ願うばかりです。