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Fri, 29 March 2024

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

今回は、10月1日に施行された、ビザの申請に関するいくつかの変更点についてお伝えします。英国国境庁はこのように常にビザにまつわる制度の変更を頻繁に行っているため注意が必要です。あとになって思わぬ変更に気が付いて慌てることのないように、常に新しい情報に目を通しておきましょう。

● ビザ申請用紙の変更

ポイント・ベース制を使いビザの申請をする場合(Tier1: Exceptional talent/Investor/Graduate entrepreneur/Entrepreneur/General、Tier2、Tier4: Child/General、Tier5: Temporary worker)の申請用紙が、10月1日以降変更されています。以前の申請用紙を使った申し込みは、10月22日までは受け付けられますが、以降は不可となるのでご注意ください。更に、扶養家族ビザ(PBS Dependants)の申請は、これまでは1種類しかありませんでしたが、現在はTier1、2、5の被扶養者共通のものと、Tier4の被扶養者専用に分けられています。

● オーバーステイとビザ更新について

7月にお知らせしました通り、オーバーステイ(ビザで定められた在留期限の終了後も、出国せずに英国に滞在すること)に関する法律が10月1日より変更になりました。これまではオーバーステイをしながらビザの申請をしても、審査をしてルールに則っていると判断されれば許可が下りる場合がありました。しかし、改正後は、ビザの期限が切れてから28日を超えて英国内から提出された申請を一切受け付けません(ただし申請をビザの期限が切れる以前に行い、申請を却下された時点でアピールした場合を除く。オーバーステイの詳細についてはケースによって多岐にわたりますので専門家にご相談ください)。もしもオーバーステイをして自主的に出国をしない場合は、英国国境局に強制的に退去を命じられます。そうした場合は英国への再入国が難しくなると、英国国境局は明言しています。

● Tier1(Exceptional talent)に関して

昨年7月に政府が新たに開設した、Tier1(Exceptional talent)の定義の一部に変更があります。Exceptional talentは、科学、人文科学、技術、芸術の分野における優れた人材を受け入れるためのルートですが、各分野において既に功績を残している人材だけでなく、これからの活躍が期待できる将来有望な人材にも開かれています。今回の変更点は、“exceptional promise”(将来有望)という見地は芸術の分野でビザを取得しようとする場合には適用されなくなったということです。同ビザの支給に伴う候補者選定は、The Royal Society(王立協会)、Arts Council England(英国アーツ・カウンシル)、The Royal Academy of Engineering(英国王立工学アカデミー)、The British Academy(英国アカデミー)という、各分野における英国内の権威ある学術団体が監督し、最も優れた人材と見なされた申請者を推薦する形で、英国国境局にアドバイスを行いますが、いずれにせよ、ほかのルートより判断基準がはっきりしていないこともあり、提出書類も多岐にわたっているため、申請を考えている場合は、自己判断のみで済ませようとせずに、まずは専門家のアドバイスを受け、慎重に手続きをすることが必要です。

ここ数年、移民法案は改正を繰り返しています。英国国境局によって現在も大小の様々な変更がなされており、EEA以外の国籍を持つ人にとっては厳しい状況であるといえるでしょう。確実なビザ取得のためにも、手続きは専門家と二人三脚で、取得のタイミングなどを熟慮しつつ、計画を立てて着実に進めることをお勧めします。

 
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