ニュースダイジェストの制作業務
Sat, 20 April 2024

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

価格上下で大騒ぎに - ビットコインとはそもそも何か?

仮想通貨「ビットコイン」の急落が話題になっています。1月末には日本で仮想通貨取引所大手「コインチェック」が約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」を外部の不正アクセスで失ったと発表し、金融庁が同社に業務改善命令を出すことになりました。昨年4月、日本は世界に先駆けて仮想通貨交換業者の登録制を導入しましたが、この一件は仮想通貨の普及に影響があるでしょうか。

そもそも、この「仮想通貨」とは何を意味するのでしょう? ビットコインを例に、おさらいをしてみましょう。

ビットコインは2009年に作られた「仮想」の「通貨」です。「暗号通貨」と呼ばれることもあります。08年10月、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物がインターネット上に投稿した論文によって提唱されました。翌09年1月にはビットコインの理論を実現するためのソフトウェアが開発され、最初の取引が行われました。10年2月、ビットコインの両替ができる最初の取引所が誕生し、同年5月、初めて現実社会でビットコインを使った決済が行われました。

ビットコインは通貨ではありますが、通常の紙幣や硬貨のように手に触れることができず、仮想の世界にあります。個々のビットコインはコンピューター・プログラムによって生成され、「電子のお財布」の中で売買行為が行われています。「電子の通貨」と考えた場合、ネット上で買い物をしたり、ダウンロードしたりする際の電子商取引が思い浮かびますが、この場合は通常の通貨(ポンドや円などの法定通貨)を基準としていますよね。法定通貨は特定の国や地域に限定されていますが、ビットコインなどの仮想通貨は特定の国や地域などに限定されない、無国籍の通貨です。英国で言えばイングランド銀行(英中銀)、日本で言えば日銀などに管理されない通貨で、通常の銀行口座に置いておく形を取りません。

ではどうするのかというと、ビットコインの管理は、ビットコインを扱う者同士が対等な関係で取引をすることができる通信システム上で、専用プログラムを介して行われます。

具体的に見ていきましょう。ビットコインを利用したい人は、スマートフォンやパソコンに専用の「電子財布」を用意します。この財布(ウォレット)には、銀行の口座番号に匹敵する「ビットコイン・アドレス」が入っていて、ビットコインのお財布を持った人同士で、銀行を通さずに直接送金ができるようになります。ビットコインを使えば、手数料を支払わずに世界中で決済をすることが可能になるのです。ビットコインを手中にするには、先述のように専用のプログラムで高度な計算を行って新規発行分のビットコイン通貨を得るか、もしくは、「取引所」と呼ばれるサービスで現実のお金をビットコイン通貨と交換する方法があります。

2月5日、英銀行グループ大手ロイズが900万人に上る利用者に対し、クレジット・カードを使ってビットコインを購入することを禁じる、と発表しました。ビットコインの取引価格がここ数カ月、非常に不安定になっており、昨年12月時点では1万4000ポンド(約212万円)が、今年2月上旬時点では6000ポンドに下落。銀行側は投資としてビットコインを買った人が巨額の負債に見舞われることを懸念したのです。口座利用者が支払えない場合、銀行が負債を引き取らざるを得なくなります。英国では数万人がビットコインに投資したと推測されています。ロイズ・グループの傘下にはハリファックス、スコットランド銀行などの銀行があり、他の金融グループもロイズに続くかもしれません。

ビットコインの売買は匿名で行うことができるため、マネー・ロンダリング(資金洗浄)や、麻薬や武器を違法に買う人がいることも問題視されています。フェイスブックは既にビットコインを含む仮想通貨の広告出稿を禁止しました。英財務省は取引相手の身元を明らかにするよう、仮想通貨に規制をかける可能性を模索しているそうです。

 
  • Facebook

お引越しはコヤナギワールドワイド 日系に強い会計事務所 グリーンバック・アラン 不動産を購入してみませんか LONDON-TOKYO Dr 伊藤クリニック, 020 7637 5560, 96 Harley Street

JRpass bloomsbury-solutions-square

英国ニュースダイジェストを応援する

定期購読 寄付
ロンドン・レストランガイド
ブログ