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Thu, 28 March 2024

政府が電子請願サイトを開設 - 署名が10万超で下院審議の可能性

署名が10 万超で下院審議の可能性
政府が電子請願サイトを開設

政府や自治体に住民が要望や意見を述べることができる「請願」という制度は昔から存在するが、現在はそれがインターネット上で行えるようになっている。前労働党政権の試みに続き、現在の連立政権もこのほど、電子請願のウェブサイトを開設し、既に多くの請願が集まっている。

政府の電子請願サイトに掲載されている請願の例

請願の内容 署名数
(2011年8月15日現在)
最近のロンドンでの暴動に参加し、有罪となったすべての者から、福祉手当受給権を剥奪する。 202,164
政府による燃料税引き上げ案を廃案にする、ガゾリンの価格確定安定化の仕組みを導入するなどの方法により、ガソリン価格を引き下げる。(*) 35,110
死刑を禁止する現行制度を維持する。 22,514
無料で視聴できるチャンネルによるすべてのF1レースのテレビ中継を継続する。(**) 18,487
英国の欧州連合()離脱の是非を問う国民投票を実施する。 15,853
死刑制度を復活させる。 15,231
最近の英国各地での暴動に参加し、有罪となったすべての者から、福祉手当受給権を剥奪する、それらの者が英国籍保持者でない場合、本国に強制送還する。 7,567
大麻を合法化する。 5,328
公共図書館の価値が国・地域レベルで認識され、政府が公共図書館を支援することを求める。 4,965
同性愛者の男性が輸血のドナーとなることを禁止する現在の取り決めを撤廃する。 3,662

(*) 保守党の下院議員が提出した請願
(**) 現在、F1レースの中継はBBCのみが行っているが、最近、2012〜2018年の中継は、BBCに加え、有料チャンネル「スカイ・スポーツ」が行うことが発表されたことを受けた請願

Source: HM Government


前労働党政権が運営していた電子請願サイトに掲載された、 ちょっと変わった請願の例

BBCの車情報番組「トップ・ギア」の司会者、ジェレミー・クラークソンさんを
英国の首相にする。

赤毛の人にのみ、英国に住むことを許可する。

80年代のニュー・ロマンティック系バンド、スパンダー・バレエの代表曲「Gold」を
英国の国歌にする。

動物病院での動物の治療費を付加価値税(VAT)の免除対象とする。

政府は、絶滅した動物のクローン作成、繁殖を行う。

コンピューターのキーボードでの「Caps Lock」キーの使用を違法にする。




政府の情報ポータル・サイト「ダイレクトガブ」の内部に設置されたサイト「e-petition」 (http://epetitions.direct.gov.uk



請願の提出は誰でも可能

政府は今月4日、電子請願(e-petition)のウェブサイトを立ち上げた。政府の情報ポータル・サイト「ダイレクトガブ」の内部に設置されたこのサイト(http://epetitions.direct.gov.uk)では、一般の人は誰でも、政府に実行してほしいと思う事柄を、請願として提出することができる。請願は、政府の職員によってチェックされ、問題がないと判断されれば、同ウェブサイト上に掲載される。人に不快感を与えたり、個人の中傷に当たるような請願、また政府に関係がないと思われる内容の請願などは、掲載されない。

請願は、1年間にわたってウェブサイトに掲載され、内容に同意する人は、サイト上で署名できる。10万人以上の署名が集まった請願は、下院の「一般議員議事特別委員会(Backbench Business Committee)」に差し向けられ、同委員会は、それら請願の内容について、下院で審議を行うかどうかを決定する。

政府が電子請願サイトを開設したのはこれが初めてではない。前労働党政権は、トニー・ブレア氏が首相を務めていた2006年、首相官邸のウェブサイト内で、同様の電子請願サイトを立ち上げた。しかし、同サイトは、2010年の総選挙前に閉鎖。今回新たに始まった電子請願サイトは、国民の大きな関心を集め、開設日には、アク セスが殺到してサイトが何度も不具合を起こすほどであった。

電子請願サイトに関する懸念とは

今回の電子請願サイトの開設に対する肯定的な意見には、「国の政治行政に関して有権者が意見を述べる場を提供し、議会と有権者のつながりを深める機会を創出する」などといったものがある。

一方、否定的な意見としては、特に右派的思想を持つ人々が、自らの主張を振りかざす道具として同サイトを使うのではとの懸念がある。例えば、今回のサイトの開設日には、死刑制度復活を求める請願が多くの署名を集めたが、これは、右派的思想を持つ有名ブロガーが、ネット上で同請願への署名を訴えたことが背景にある と言われている。同サイトには現在、英国の欧州連合(EU)離脱に関する国民投票の実施を求める請願や、移民の流入数制限を求める請願なども掲載されている。

また、最近、ロンドンなど英国各地で暴動が発生した際は、「暴動に参加し、有罪となった者から福祉手当受給の権利を剥奪する」ことを求める請願が掲載された。この請願への署名数は、同ウェブサイトに掲載された請願の中で初めて10万人を超え、前述のように、下院での審議の可否を決めるため、一般議員議事特別委員 会に差し向けられた。

旧サイトでは首相の辞任求める請願も

ちなみに、労働党政権下で開設されていた電子請願サイトで多くの署名を集めた請願には、車両に対する道路通行料課金制度導入案に反対するもの、ゴードン・ブラウン前首相の辞任を要求するものなどがあった。中でも道路通行料制度反対の請願は、実に180万人もの署名を集め、当時大きなニュースとなった。今後、英国の政治や社会情勢の変化に合わせて、どのような請願が提出され、多くの人の署名を集めるのか、観察してみるのも面白いだろう。

 


Directgov

2004年に開設された政府の情報ポータル・サイト。「教育・学習」「育児」「家・コミュニティー」「移動・交通」「雇用」「犯罪」「医療」「若者」「自動車」「家計・税・福祉手当」などを含む多くの分野に関して、政府及び自治体が提供するサービスを中心に、様々な情報提供を行う。例えば「育児」の項では、託児所や保育園、ナニーやチャイルド・マインダーの探し方などが紹介されている。「家計・税・福祉手当」の項では、自分がタックス・クレジット(tax credit)を受給できるかどうかのチェックなどができるようになっている。サイトのアドレスはwww.direct.gov.uk

(猫山はるこ)

 
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