ロンドンのゲストハウス
Sat, 25 November 2017

相続税とその対策

英国人と結婚していますが、夫が死亡すると相続税がかかるようで心配です。

Domicile(定住者)同士(英国人同士など)やNon-Domicile(非定住者)同士(日本人同士など)の相続は金額に関係なく非課税ですが、Domicile(英国人)からNon-Domicile(日本人)が相続し、相続財産が65万ポンドを超える場合は、通常、相続税がかかってしまいます。しかし、Non-Domicileの配偶者は「Domicile」になることが可能です。こうすれば両者ともDomicileですので、相続税は発生しません。Domicileになるかどうかは、ご主人が死亡した後で選択することもできます。ただし、Domicileになりますと、ご本人が死亡した場合は世界中に保有する資産が相続税対象となりますのでご留意ください。Non-Domicileは英国内の資産のみが対象です。

英国では、相続税はどのくらいかかるのですか。

基本的に、非課税枠(Nil Rate Band=NRB)の32万5000ポンド(約4850万円)を超える相続財産(Estate)に対して40%の相続税がかかります。Estateは、家またはその他の不動産、現金、預金、株式などの有価証券、車、宝石など、ほとんどの資産から借入金などの負債を差し引いた資産を指します。例えば、Estate が50万ポンドであれば、(500,000-325,000)×40%=70,000ポンドが相続税です。非課税枠は夫婦間で引き継ぐことができます。

不動産の価値が大幅に上がっていますが、持ち家を相続させる場合の特別な控除などはあるのでしょうか。

2017年4月6日から、この日以降に死亡した人に対し、居住用不動産に対する相続税非課税枠(Residence Nil Rate Band=RNRB)が導入されました。上記NRBに加え、自宅を直系子孫(子供、孫、義理の子供など)に残す場合は更に10万ポンドの非課税枠をEstateから差し引くことができます。RNRBは今後、下記の表のように上昇する予定です。ただ、Estateが200万ポンドを超えますと、超えた金額の半分がRNRBから引かれてしまいますのでご注意ください。本税年度のRNRBは10万ポンドですから、Estateが220万ポンド超になるとRNRBは消滅します。

居住用不動産に対する相続税非課税枠
(Residence Nil Rate Band)
税年度非課税枠
2017 / 18年 10万ポンド
2018 / 19年 12万5000ポンド
2019 / 20年 15万ポンド
2020 / 21年 17万5000ポンド

自宅の価値が100万ポンドでほかに金融資産が20万ポンドあります。我々は日本人同士の夫婦です。夫婦が死亡した場合の相続税はいくらになるでしょうか。

ご主人が先に亡くなり奥様がすべて引き継ぎ、その後、奥様が2020/21税年度にお亡くなりになると仮定しますと、相続税は(£1,200,000-(£325,000×2+£175,000×2))×40% で80,000ポンドとなると思われます。

誰が相続税を払うのですか。

受け取り人が払う日本と異なり、英国ではEstate(相続財産)からまず相続税が支払われます(具体的には遺言により指名された遺言執行人(Executor)が手続きをします)。その後、Estateは受け取り人に配分されます。

生前譲渡制度はありますか。

英国には譲渡税はなく、譲渡した本人が譲渡後に7年間生存すれば、譲渡した財産は相続税の対象から外されます(Potential Exempt Transferと呼ばれます)。譲渡後7年間以内に本人が死亡した場合は、3年後から20%ずつ相続税額が軽減されます。

今、住んでいる家を息子名義にして、私が7年間生存すれば、相続税はかからないということですね。

譲渡は無条件なおかつ完全な譲渡でなければなりません。譲渡後、その家に継続して住んでいる場合はいまだにその資産から恩恵を受けているので、制限つき譲渡(Gift with Reservation)とみなされ、譲渡された家でも相続税対象になる可能性が大です。ただし、息子さんに適正な金額の家賃を払えば譲渡として扱われますので、この後7年間生存すれば相続税対象外となります。

Potential Exempt Transferにより軽減される相続税金額
譲渡してから死亡までの期間相続税額の割合
3年以内 100%
3~4年 80%
4~5年 60%
5~6年 40%
6~7年 20%
7年超 0%

よく利用されている相続税対策にはどのようなものがありますか。

夫婦で被保険者として終身の生命保険に入り、最後の1人が死亡する際に払われる保険金を、相続税支払いに当てる対策は広範に利用されていると思います。生命保険をトラスト(信託)に入れることで通常、保険金は相続税対象外となります。そのほか、事業資産控除(Business Asset Relief)対象の資産を保有することも検討の価値ありです。これは、小ビジネスに投資資金を誘導することを目的としている控除で、未上場企業や新興企業を中心とするAlternative Investment Marketに上場されている企業の株式を2年超保有すると、相続税対象外資産となります。相続税対策は個々の事情により様々で、とても複雑なため、専門家の助言をあおぐことを強くお勧めします。

 

 
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和枝ドゥルーリー APFS© 和枝ドゥルーリー APFS
日本人ファイナンシャルアドバイザー(CFP)。十数年間の米英系投資銀行勤務を経て、FAとして独立。日英両方の資格を有する。大手独立系FA会社に所属。
E-mail: info@kazuedrury-ifa.co.uk
Web: www.kazuedrury-ifa.co.uk

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