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ロンドンのゲストハウス
Sat, 24 August 2019

本当に使える会計

経営において会計は身を守る防具だけでなく、勝ち抜くための武器にもなります。英国日系企業の経営者が知っておきたい会計トピックを、会計のプロが分かりやすく解説。

第53回: 700万ポンドのVAT支払い請求をめぐる画期的な訴訟

今月は、グリーンバック・アランLLPがアドバイスを提供した案件をめぐる、最近になって判決が下されたばかりの画期的な訴訟について取り上げます。この訴訟では、700万ポンド(約12億円)の付加価値税(VAT)支払い請求に対する、教育サービス大手の英国子会社A社による異議申し立てが認められました。裁判所は、A社が規則を悪用していたという歳入関税庁(HMRC)の主張を全面的に退け、VATの支払い請求を却下したのです。

訴訟の背景とは

A社は、英国で20年以上にわたり、フランチャイズのライセンスを与えた指導者を通じて英語や数学など様々な科目を生徒たちに教えています。同社は2005年までフランチャイズ契約の一環として生徒が使うワークシートを各指導者に提供し、各指導者はフランチャイズ料に課せられる標準税率のVAT(当時は17.5%)を負担していました。しかし、教育サービスの提供はVATが免除されているため各指導者はVAT登録ができず、VATの還付を請求できなかったのです。通常であればワークシートなどの印刷物はVATがゼロ税率ですが、本件の場合はフランチャイズ契約の一環としてワークシートが供給されているため、ワークシートの供給も含めた料金全体にVATを課すことが義務付けられていました。

その後の経緯

2005年に当事務所は、別の会社がフランチャイズ契約とは別にワークシートを供給すればVATのゼロ税率が適用され、A社はコストを節減でき、節減分の一部を各指導者に回すことが出来るとアドバイスしました。そこでA社はワークシートを供給する別会社を設立し、両社が完全に独立して運営されるようになったのです。後に裁判所の判決でも言及されたように、これによりA社は年に100万ポンドを超える節減を見込んでいました。

A社はHMRCに対して新たな仕組みを通知しました。この仕組みは、最も節税効果の高い方法で企業が業務調整することを認める英国及び欧州連合(EU)の法規に従ったものでした。ところがHMRCは、供給を2つに分ける新たな仕組みは「見せかけ」であり「不正」であると判断し、VATの査定額として240万ポンドの支払いを言い渡しました(ちなみに2011年に法規が改正され、こうした方法で供給を分割して異なるVATの税率を課すことが認められなくなりました)。

両社はHMRCに対して異議を申し立てるとともに、引き続き新たな仕組みで運営しました。その後、HMRCは追加の査定額を示して総額700万ポンドの支払いを命じ、両社はこれに対しても異議申し立てをしましたが、HMRCは却下。両社は裁判所に提訴し、2013年に7日間にわたる審理が行われました。そして今年1月に裁判官は両社の主張を支持し、訴えを認めて「見せかけ」や「不正」はなかったとの判断を下しました。尚、この判決に対して今後、HMRCが上訴する可能性もあります。

当事務所の見解

この訴訟は、英国やEUの法規に従って企業が節税効果の高い方法で業務を調整する権利を持つことを確認したもので、英国の納税者にとっては重要な勝利です。この訴訟で示された要点や結果に基づけば、企業は引き続きこうした節税効果の高い方法で業務を調整すべきでしょう。

ポール・ブラッドリー ポール・ブラッドリー
パートナー
VATパートナー。関税の領域で17年の経験を積み、通算20年以上この分野の専門業務に携わる。グローバル企業の頭を悩ますVAT問題を鮮やかに解決。F1観戦が趣味で、マクラーレンのファン。


 

パートナー陣

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当記事はあくまでも一般的な情報を提供する目的で作成されており、専門的なアドバイスを目的としたものではない為、これを受けての対応は独自の責任の下で行ってください。
正式なアドバイスは、全体的且つ詳細状況を把握した上にのみに提供される必要があります。また、ここに記載の情報は、執筆当時において最も正確なものとして提供を行っています。
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